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地獄門のTSのレビュー・感想・評価

地獄門(1953年製作の映画)
3.1
【まるで共感できない主人公】71点
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監督:衣笠貞之助
製作国:日本
ジャンル:時代劇
収録時間:89分
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パルムドールとアカデミー賞外国語映画賞のどちらも受賞している唯一の邦画。加えて大映初の総天然色映画でもあるので興味深い。明るすぎるとも言えるその色彩は、当時の人に途轍もないインパクトを与えたことでしょう。まだカラーテレビが登場していない時代、というか白黒テレビですら普及しつつある時に今作が映画館で流れたわけですから凄いでしょう。我々が初めて3D映画を見たときの感覚に近しいのではないでしょうか。

時は平安時代。遠藤武者盛遠は敵を倒し袈裟を助けるのだが、彼女にすっかり惚れてしまう。しかし彼女は既に渡辺渡の妻であったのだが。。

いやはやこの主人公のクズっぷりとくれば最早苛立ちを通り越して笑ってしまうくらいです。袈裟に惚れたのは良いですが、そこからの執着心はある意味ホラー。諦められない盛遠は渡に競べ馬を申し込んだり、宴席で真剣勝負を挑むなどまさに恥辱の極み。挙げ句の果てには袈裟に、俺のものにならないと渡を切るぞなんて言い出すから仰天。こんな人、現代であればすぐにお縄にかかり終了なのですが、この時代に、そしてそこそこ権力を持つ人がこういうことをするのですからそれは厳しい。男女関係なく強引で我儘な人はいますが、この時代となると比較的弱い立場にあった女性は、男性に都合の良いように使われていたのかもしれません。まるで主人公に共感できない稀有な映画でした。

スコアとしては平均的。面白さとしてはそこまでですが、この作品が持つ映画史的意義と、盛遠のクズっぷりが最早爽快なくらいでしたからスコアはこれくらいです。ところで邦画でこんなに古い時代を扱った映画は『羅生門』や『虎の尾を踏む男達』以来でありました。何気に平安時代より古い時代を扱った映画はあまりありません。
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