うえびん

惑星ソラリスのうえびんのレビュー・感想・評価

惑星ソラリス(1972年製作の映画)
3.7
潜在意識に揺蕩う

1977年 ソ連作品

映像は絵画的、セリフは詩的、音楽は未来的、テーマは哲学的。地上の現実と惑星での未来を対比させることで、人間の「愛」や「良心」を炙り出す。

水、火、雪、樹々の描写が美しい。惑星や観測ステーションの描写や音楽も旧くて新しい新鮮味が感じられる。舞台に合わせた登場人物の服の色が印象に残る。

突然現れる東京の首都高(50年前?)のドライブシーンは、現実の未来都市を表しているのだそう。当時を知らないけれど、マツダ「ルーチェ」「ファミリア」の看板、どこかで見た分岐点にノスタルジーを感じる。自分にとっての過去と作品上の未来が交差するのが面白い。

宇宙のかなたの謎の星「惑星ソラリス」。生物は存在せず、理性を持った有機体と推測されるプラズマ状の“海”によって被われている。ソラリスの軌道上にある観測ステーションに送られた心理学者クリス。彼がそこで目にしたもの、体験したものとは…。

外から眺める地球と地上の人間、惑星やクローンを“鏡”にして、様々な本質が見えてくる。

男と女
親と子
有機物と無機物
科学と情緒
水と火
生と死
現在と過去
睡眠と覚醒
祖国(ロシア)とソ連
変わりゆくものと変わらないもの

鑑賞中は独特の浮遊感が、鑑賞後は海外の難しい古典文学の読後感のようなものが残った。

「人類愛」「地球愛」
気宇壮大なメッセージを、地上に生きる人びとの心の深奥に響かせようと試みた、映画による実験のような作品でした。
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