ツクヨミ

長屋紳士録のツクヨミのレビュー・感想・評価

長屋紳士録(1947年製作の映画)
3.6
日本人的な"拒絶"と"慣れ"。
戦後の東京で暮らすおたねは隣人の田与から少年を一晩預かってくれないかと言われ、最初は拒否するが一晩だけとなあなあで同じ時間を過ごしていく…
小津安二郎監督作品。今作は親から逸れた子供と預かることになるおばちゃんの関係性をうまく描いていました。よその子供だから関わりたくない、しかし一度預かってしまったのだからそのまま何処かに置いていくわけにはいかない…そんな日本人的な拒絶と人情が合わさった状況がじわりと感じられる。そして次第には"慣れ"を経て擬似的な家族になっていく…人間慣れてしまえば他人でも親しみが湧くもの。特に子供のシラミがおたねに移って一緒に痒そうにもぞもぞしているシーンはすごく和むし親子感を高めてくれているシーンでした。
そして今作でも"小津調"は健在だ。もはや最初の背景カットが2つ3つ続くのは素晴らしい構図の美しさ。建物と小道具がばっちり合い独特の雰囲気を作り出す…これこそ小津安二郎監督の魅力。今作は特に人物を置かずに背景と小道具が映えるカットが多かったように感じた。
ラストは当時の戦災孤児を映したシーンで当時の社会問題を反映させている。社会派な側面も持ち合わせている作品でした。
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