シネマJACKすぎうら

FAKEのシネマJACKすぎうらのネタバレレビュー・内容・結末

FAKE(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

当たり前かもだが、ドキュメンタリーって、単なる記録映画とは違い、それぞれの物語をもっている点がなんとも面白い。
この映画は、世の中に縦横無尽に張りめぐらされた”FAKE=まやかし、でっち上げ”の存在と、その”FAKE”に押しつぶされてしまった男の哀しみを描いた作品だ。

特に面白いのは、テレビ局のスタッフや営業(?)が佐村河内氏の自宅を訪れ、番組への出演依頼をかけるシーン。これ、妙に可笑しい。彼らの営業トークというか、インフォメーションは、まさに”FAKE”で溢れ返っているのだ。

ただ、思えば日常生活やビジネスの場(特に営業的な場)においては、この程度の”ハッタリ”など往々にしてあり得るのではないだろうか。本作としても、特に(テレビ局の)彼らを悪者として捉えているわけではない。
とはいえ、観客の佐村河内氏に対する視線や視座は次第に変わっていくはずだ。

別に、この映画は”佐村河内騒動”を分析するわけでも、ことの善悪や正誤を切り分けることを目的としているわけでもない。ただ、それだけマス媒体の情報によって我々の認識は偏ってしまう、ということなのだろう。

また、全編をとおして不思議なユーモア、というか”笑い”に溢れているのも本作の魅力。
劇場はほぼ満員だったが、随所で笑い声が上がっていた。そして、なぜか”愛らしさ”とか”優しさ”といった空気感に溢れているのも味わい深い。おそらく監督の”演出意図”にもっとも貢献したのは佐村河内氏の自宅で飼われている実に愛らしいニャンコではないだろうか(笑。

エンドロール後に出てくる数十秒のシーン。あれをどう捉えるべきか。。
ある意味”今さら”で”単刀直入”な監督の質問。それに対する佐村河内氏の反応。
撮影最終日、おそらくは監督に対してかなりの”信頼感”というか”親しみ”や”友情'みたいな感情を抱いていた筈の佐村河内氏。そんな彼には、あの質問に対して容易に”ええ、もちろん”などとは答えられないだろう。それだけ、”FAKE=まやかし”は社会生活のいたるところに溢れ返っているのだから。もしかしたら、この映画も含めて。

終映後、近くの席に座っていた男性が呟いた。「面白かった〜〜」
さすがに、彼の発言にFAKEはないだろう(笑。