yunumata

FAKEのyunumataのネタバレレビュー・内容・結末

FAKE(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

非常に楽しみにしていた映画だったけれど、見終えてまず、ちょっと佐村河内に寄り過ぎではないかな? とは素直に思って……。けれどすぐに、公平中立なんて糞くらえ、撮りたいものはそれじゃない、この虚像と哀しさに満ちた、魅力的な人物の中に飛び込もうとした映画なのだろう、そもそも『A』だってそうだったじゃないか……とも思い直した。ある意味、深い考察はなく、ただただ取材対象に耳を傾けて、寄り添おうとしているような映画。追い求めるのは真実でも、ましてやジャーナリズムでもない、ふしぎな人間観察……という2時間だった。それでも二箇所だけ、この人は「本当のこと」を言っているのだろう、と思える場所があって(森達也もここをすごく大事にしていて、演出も加えている)、そこはすごくグッと来たから、だからこそこの映画は優れたラブ・ストーリーであり、また音楽映画なのだと思う。
ラストシーン、「いい曲ですね」と言って欲しい佐村河内に対して、「いいシーンが撮れました」と返す森達也には思わずニヤニヤしたけれど、その後しばらくしてゾクゾクもし始めた。あれこそが、彼のネタ明かしなんだね。テレビで流してもいいんじゃない? 深夜枠を買い上げようぜ、フジテレビの。

劇場(2016.06)
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