ヒッチコックがイギリス時代の終盤に撮った作品。
イギリスに向かう列車の中で1人の老女が消えてしまうが乗客は口を揃えて「そんな人は居なかった」と証言する。
ジョディー・フォスターの「フライト・プラン」はここからシチュエーションを引用したのだろうか、窓に書いた文字が残ってるというアイデアもこんなに古くからヒッチコックが使っていた。
捨てたゴミが風に舞いティーバッグのパッケージがガラス窓に張り付くという小技も効いている。
しかしこの作品の一番の面白さは列車に乗り合わせた人たちの様々なキャラクターにある。
消えた老女を必死に探すちょっと気の強い主人公。
彼女に協力する唯一の相手は最悪の出会いをした図々しい男。
クリケットの決勝を見るためにはどうしても列車が遅れて欲しくない2人組の男や、関係が公にされると困る不倫カップルなどなど。
少々コミカルな感じでスタートした物語は後半からどんどんシリアスになり、銃撃戦にまで発展する。
唯、何故そんな事になったのか…という根本的な説明は不足しているためリアルさには欠ける。
でも次から次へとハラハラさせられて最後まで面白い。
実は最初の方でギター弾きが暗闇で…っていうところから計画は進んでいたんだけどね。
エンドロールでも流れたあのメロディが耳に残る(笑)
老女役のディム・メイ・ウィッティは愛嬌のある顔立ちで印象的、「ガス燈」でもイングリット・バーグマンのご近所のお婆ちゃんとして出てました。
