メル

エリザベート 1878のメルのレビュー・感想・評価

エリザベート 1878(2022年製作の映画)
3.5
バイエルン王国(旧ドイツ)に生まれ16歳でオーストリア帝国のフランツ・ヨーゼフ1世に嫁ぎ、絶世の美女として歴史に残るあのエリザベート皇妃の1878年の一年を描く。

この年エリザベートは当時の女性の平均寿命である40歳を迎えたのだ。

今までの若さと美が失われていくことへの焦り、窮屈な宮廷への反発、公務に忙しい夫とのすれ違いから少しずつ壊れていくエリザベート。
彼女は現実から逃げる様にイングランドや、従兄弟で「狂王」と言われたルートヴィッヒ2世のお城へと旅をする。

原題のCorsageはドイツ語のコルセットを意味し、彼女が如何に古いしきたりの中で窮屈な思いをしていたか…を言いたいのかも知れない。

しかし、この作品の中のエリザベートは晩餐会の途中でも気に入らなければ勝手に退席、失神の真似をして公務を放棄、侍女を影武者に仕立て上げたり、マリファナにタトゥーとやりたい放題だ。
自由奔放に育った娘がそうそう古いしきたりの中で満足は出来ないだろう。
挙げ句の果てにはお気に入りの侍女の結婚を許可せず、侍女の人生をコントロールしたのはどうなの?

自分の窮屈さを周りに当たり散らし、周囲を凍らせている事に気が付かない。

その一方で精神病院や野戦病院の慰問には熱心だった。彼女は自分の中に患者と同じ気持ちが潜んでいるのに気づいていたのだろうか。

実在のエリザベートは、美への執着と宮廷を嫌った事、浪費家だったというくらいしか記述されてないが、そんな彼女の評判をもっと酷い所まで下げている気がしてとても残念だ。
それとも、この作品の中でエリザベートを解放してあげたのだろうか?

唯一救われるのは、息子からも娘からも愛されていたかどうかは分からないけれど、彼女が我が子をとても愛していたのが描かれていた点だ。
実際、息子に先立たれた晩年は常に喪服だった彼女の悲しみが想像出来る描かれ方は良かった。
メル

メル