三畳

悪魔の発明の三畳のレビュー・感想・評価

悪魔の発明(1957年製作の映画)
5.0
こんな映画見たことない。潜水艦の窓から覗く深海の、生っぽいのに2Dなかんじ。魚の動きが最高だ。ワクワクするマシーンの構造。
見た目の面白さばかり特筆したくなるけれど、話もシンプルで複雑な要素を孕まずにすごくおもしろい。だから後半はほぼサイレントなのに成り立ってる。
それでいてかなり教訓的示唆的でもある。空を泳ぐ船や海を走る自転車、発明の夢や希望をいっぱい魅せてくれる。ヴェルヌの作品を見ていると、発明への探究心は冒険と似て、素晴らしいものなんだと思う。だけどそれを利用する悪の勢力が発明家を悪魔にしてしまう恐ろしさもある。
レイヤーを重ねたような映像、凝りに凝っているとも、制限されているとも取れる、実はかなりハイレベルなんじゃないかと思うが、アナログっぽい手法に、あんまり構えず観ていたから、見事に片付いたエンドも良かった。音楽が工夫されてて効果的だったので映像も狙ってやっていると思う。

月世界旅行っぽいと思っていたら、やっぱり影響を受けてるんだ。あと、チェコのFlashゲームの「サモロスト」や「マシナリウム」を思い出させたので、好きな人はぜひ見てほしい。
さらに個人的な心の景色、夢の記憶に優しく重なるような空気感もはまる、誘拐シーンの海の夜明けの色や、酸素が尽きて海底トンネルで意識を失うところもどこか気持ち良さそうだし、離れの小屋から小船に乗せたメッセージを渡したり。巨大タコをやっつけて黒い墨が上がるのもカッコいい。
CG技術が発達したとはいえ、この作品の素晴らしさを受け継ぎ、真っ向から越えて勝ったアートムービーって2016年現在わたしはまだ見つけていない。というかカレルゼマンを初見だったけどこれから片っ端から観たい。
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