Kuuta

キャリーのKuutaのレビュー・感想・評価

キャリー(1976年製作の映画)
3.8
悪意に嵌められるだけではなく、善意ある人間(先生やスーの態度を善意と呼んでいいのか若干疑問だが)すらも絡め取って突き落とす脚本が実に嫌らしい。

ソフトフォーカスやスローモーションといった凡庸になりかねない演出を、ギリギリのラインでカッコよく見せてしまうデパルマ節。切ないホラーをベースにしているのに、そういう歪さも印象に残ってしまう変な作品。テンポも良くて、98分退屈しなかった。

やっぱり炎と水が入り乱れるプロムシーンが最高だった。キャリー(シシー・スペイセク)の目玉を突き出したような顔と、あのなんとも言えない姿勢は唯一無二。

散々辛い思いをしてきて、最悪の家庭環境という足枷を払いのけ、勇気を振り絞ってやってきた晴れの舞台。それをあんな風にされちゃあ、あらゆる他者を拒絶したくなる気持ちもよく分かる。

シシー・スペイセクが、絶妙にいじめの標的になりそうなキャリーの不気味さを演じきっている。結構脱ぐ場面もあるけれど、体つきも妙に痛々しいというか、直視できない、居た堪れない気持ちになった。

罪と共に本当に赤くなったドレス、再びの風呂(ここで母親はキャリーがセックスしてきたと誤解した、とも取れる)。母親のラストは彼女自身、性的欲求を受け入れるか揺れ動いた末の磔刑のようであり、セックスそのもののようでもあり。70年代の若者の性の乱れと、キリスト教原理主義、神と悪魔の間でキャリーはズタズタになっていく。結局あの親子は、最後まで外の世界には出られなかった。

キャリーは話しぶりやプロムでの雰囲気から見るに、ちょっとでも住む世界が違っていれば、こんな風にはならなかったんだろう。先生がキャリーに手を焼いている事とか、トミーが本心じゃない事も十分に察していたし。「まともな人」代表であるスーの食卓にも、キャリー家と同様にロウソクが2本あるのがなんか良かった。

ヒッチコックオマージュ故にというべきか、今からするとやや粗い演出も随所に。「火星のような」プロムでの、赤と緑の過剰な照明と回転するカメラワークは「めまい」を連想する。

陳腐化、もはやコントっぽくなっている部分もある。プロムに行きたいと打ち明けた直後の雷ドーン。全く同じ姿勢を保って2回ベットに吹っ飛ばされる母親。プロムの超カッコイイシーンを謎の画面分割編集で見せるのは当時からしたら斬新なんだろうが…せっかくの見せ場を台無しにしていると思ってしまった。
校庭でのトレーニングシーンやタキシード借りる下りの早送りはふざけまくってるし、バケツの二段オチは完全にドリフだった。77点。
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