むっしゅたいやき

わが友イワン・ラプシンのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

わが友イワン・ラプシン(1984年製作の映画)
3.3
スターリニズムへの漠とした不安と世情。
アレクセイ・ゲルマン。
原作は父、ユーリー・ゲルマン。
タイムラインを二重に取り、独ソ戦直前の日常を舞台としながらもスターリニズムへの不穏な世情、心情を回顧する作品である。

本作は前節の通り回顧録の体裁を採る作品であり、明確なストーリーラインは無く、刑事課長である父の友人・ラプチンの強固なスターリン主義への傾倒、信奉を綴った物である。
当時七歳であった“私”の語りで物語られるが、ラプチンを含めた警察同僚と友人であったのは飽くまで父であり、その行動、思想を語る構成には不備が残る。

本作はゲルマンがカラーフィルムを一部導入した初作であるが、モノクロとの描き分けに何らかの意図が有るのかは不明である。
少なくとも私には判然としなかった。

ゲルマンの作品の特徴に、ストーリーとは全く無関係の人々の会話が録音されている点が挙げられる。
例えば駅や群衆の間で、全く不意に他人の会話が耳に入った事がある人は多かろう。
ゲルマンは意図的にこれを録音する事で、劇中に主演達以外の他人の存在を描写するのであるが、本作に於いては伝聞ベースであり、登場人物も多くまた構造的にも分かり辛い面が有る為、この特徴的なアフレコにも執拗さを感じた。

ただ、ブックレットに拠れば本作には数多くの暗喩が散りばめられているとのこと。
残念乍ら私では知識不足であり、その解明には至らなかったが、ロシア近代史に詳しい碩学が観れば、また異なる印象が得られるやも知れない。
評価は現在の私の観点からである事を、一言申し述べておく。
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