むっしゅたいやき

アル中女の肖像のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

アル中女の肖像(1979年製作の映画)
4.0
現実と夢、男性優位社会。
ウルリケ・オッティンガー。
個人的には二年程、本アプリにてブックマークで寝かせていた作品である。

此処でも様々にレビューされている作品であるので、個人的解釈のみ記す。

「主人公」
名前も無く、また台詞も無い(誰にも声が届かない)、作品のミューズとして登場。
“女性の権利”のメタファーか。
ブルーメンシャインの百面相が可愛らしい。
高らかに唄声を響かせるが、結局忙しない社会活動の雑踏の中に埋没される。

「カートの女」
カート=日々の生活(家庭)。
生活に追われ、視野も狭まり、周り(社会)を見られなくなっている女性全般とも言える。
彼女は一時主人公と共に歩むが、男に絆される弱い存在としても画かれる。
本作は全般的に男性優位社会を批判・風刺しているが、同時に女性にも批判と発奮を促している。

「三人組み」
その名の通り、社会通念。
ある時は権利(主人公)に寄り添い、ある時は批判する。
これも“女性”が演じているのが面白い。
性別を同じくするも、視点は様々である人間の多様性を、風刺を効かせて役振りしている。

映像美に就いてのレビューは、他に譲る。

本作は1970年代社会へのアンチテーゼを主題としている為、女性の社会進出の進んだ(其の進捗の是非は一旦置いて)現代の鑑賞者には分かり辛い面もあろうかと思う。
ただ其れをも含め、変遷を辿る道として鑑賞する価値はあろうかと思われる。
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