むっしゅたいやき

インセプションのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

インセプション(2010年製作の映画)
4.0
夢と現実、そのあわい。
クリストファー・ノーラン。
「またいつものノーラン節なのだろうな」と期待せずに鑑賞。

“水槽の中の脳”と云う概念がある。
古くはデカルトが発議し、パトナムが敷衍させた概念であるが、本作はこれを更に昇華させ、ノーランによる映像と、ディカプリオや渡辺謙等、演技の力技で一本に纏めた作品である。
先ず、能く此の概念を、人物の思考を著述出来ない映像作品に纏めたものだな、と敬服する。

ストーリーラインは古典的なドッペルロマーノであり、其処から更に重層化させて居る為、時系列を把握しながら臨む必要がある。
アクションを前提とした作品である為、詳細はネタバレになるので記述しないが、構成としては三幕を基礎として前述の重層化シークエンスを各々埋め込んで居るので、比較的追い易い。
この点は、三幕構成すら捨てた某ハスの『サラゴサの写本』よりも数段優しかろう。
悪癖である結末の飛躍やツッコミ処、思わせ振りな点は有るものの瑣末な点であり、全体的には名作として及第点であろうか、と思われる。

併し個人的には、ノーラン先生、此のテーマなら態々アクションSFにせずとも面白く出来そうなのになぁ、と云うのが率直な感想である。
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