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わが友イワン・ラプシンのumihayatoのレビュー・感想・評価

わが友イワン・ラプシン(1984年製作の映画)
5.0
主人公の幼少期
警察官の息子であった彼の目から見た
共産主義下での生活の様子と歴史の移り変わりが淡々と描かれる
同僚との質素で貧しい生活
厳しい規律
資本の横流し
密告
話の隅々から感じ取れる忍び寄る戦争の足音。

そこに1人の党のイデオロギーに熱心なラプシンという男がいた。
殺人犯を追うことになったラプシンは言う。
「人殺しをする奴らは狂ってて、そんなやつらを皆殺しにすれば楽園ができる」
「奴らは人でなしだ」と即答し、少しでも疑わしい人間は銃殺すると言う。
人間にはゴミみたいな奴らがいて、少しでも規律を破るそいつらを一掃すれば楽園があると思っていて、それを自分の使命と感じている。
自殺しようとした友人にも
「怯えやがって」
と吐き捨てる。

自分の思想が全能だと思っていた彼
追跡の末、殺人犯を射殺したラプシンに楽園は訪れたか?

その後の何も変わらぬ生活も、
友人は旅立ち、愛した女がその友人を追って旅に出る姿を見送るラプシンの表情も決して晴れることはなかったし
恐らくその後のスターリンの大粛清でラプシンは粛清されているだろうし、
共産主義も、彼らが青春としていた行進曲も戦争、歴史と共に去り、今はもう無い。
しかし彼もまた、赤か白かの中だけで生きさせられた被害者であると言えるだろう。

『昔は1番線か2番線しかなかった。現在は毎年の様に新たな路線が開通している。』
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