真っ黒こげ太郎

4匹の蝿の真っ黒こげ太郎のレビュー・感想・評価

4匹の蝿(1971年製作の映画)
4.0
血に飢え狂い飛ぶ死の蠅! 殺しの現場に恐怖を呼ぶ!


※本作では飛び回る蠅は出てきません。




ロックバンドのドラマーであるロベルトは、謎の黒衣とサングラスの男に付け回されていた。

その男を追い詰め問い詰めるロベルトだったが、男が抵抗してきてもみ合いになり、男が持っていたナイフを奪い刺し殺してしまう。
しかもその瞬間を「トイ・ストーリー」のウッディをふっくらさせたみたいな(なんだそれ)謎の覆面の男に写真で撮られてしまった。

それからというものの、ロベルトはたびたび現れる覆面の男に脅迫され、周囲で不可解な殺人事件が巻き起こる。
警察に頼れないロベルトは知人の勧めで探偵を雇うが…。




殺人を犯してしまったドラマーの青年がその様子を何者かに目撃され脅迫を受ける、1971年のイタリア産猟奇ミステリー映画。

「サスペリア」等で知られるイタリアン・ホラーの鬼才ダリオ・アルジェント監督が初期に手掛けたジャーロ(ジャッロ)映画。
何やら同監督の「歓びの毒牙」「わたしは目撃者」と今作で”動物三部作”と呼ばれてるそうで。
(全然知らなかったし、近所のレンタルショップには今作しかなかったけど…)



そんな本作は「主人公が事故で人を殺してしまい、その様子を取った謎の男に脅迫され、周りの人も巻き込まれてゆく」という話だが、これがまた異様なまでに癖が強い!!!
70年代の古典映画ではあるが、令和の視点で見ても十分にぶっ飛んでるぞこれ!!!
流石未だに現役の巨匠の初期作だけあって、この頃からはっちゃけてますね。w


正直お話は大した出来ではないが、70年代である事を考慮しても皆の倫理がゆるっゆるすぎる。
殺人を犯した主人公の家は(妻がいるにも関わらず)セキュリティがガバッガバだし、妻に全て打ち明けた際にもお手伝いさんに丸聞こえで「隠す気あるのか!?」と叫びたくなった。
(その後も普通に仕事に出てるし…。)


殺害描写は針金で首を絞められたり、毒薬を注射されたりで、過激なグロシーンはせいぜい作り物感満載の首チョンパ程度で全体的に大人しめ。
とは言え独特なカメラワークと首絞めや毒注射の様子を生々しく描いており、印象に残る。
大音量でBGMが鳴る中で、別の場所へカットが変わる度に音が小さくなったりするのもこだわりを感じる。


ドラマを挟む場面も多いが、個性的な連中が多く100分以上の尺ながら飽きない。
主人公は自分の周りで大量殺害が起こっても「警察へは行かんぞ!!!」と言いきっており、しかもその間も犯人を追いながら普通に生活している。
最終的には自発的に犯人を待ち伏せし対峙するが、お前罪悪感とかないんか?

雇われた探偵はこの3年間で一度も事件を解決したことがないという超が付く程のポンコツ探偵で、「84回続いたから統計学的な視点で次こそ解決できる!」という謎の自身家だったりする、しかもオネエ。w
他の脇役も主人公の知り合いや、主人公に襲われて以降ビビる郵便配達員等、大小問わずキャラは個性的で賑やか。


犯人の正体に関してはタイトルを生かした伏線が張られており、クライマックスでその正体や動機が明らかになるのだが、タイトルとの結びつきや動機が無茶苦茶理不尽!!!
主人公からしたら、とばっちりもいいトコじゃねぇか!!!
そもそもそのトリックなら蠅である必要性がないやん!!!w
(被害者の網膜で死ぬ寸前の映像が見えるって、ブラックジャックじゃないんだから)

そして最後のオチも、無駄に芸術的でイカレたオチ!!!
漫☆画太郎作品のオチじゃねーーーか!!!



…いやぁ、こうして見てみるとかなりぶっ飛んだ珍品でしたね。w
当時の人どころか今の僕にも理解できない、アルジェント監督の尖りまくったセンスが凄まじい勢いで炸裂しています。

50年以上前の古い作品ですが、2010年にDVDが出てたりするので、昔の珍品に触れてみたい人は是非どうぞ。