真っ黒こげ太郎

ハンテッド 狩られる夜の真っ黒こげ太郎のレビュー・感想・評価

ハンテッド 狩られる夜(2023年製作の映画)
4.2
深夜のガソリンスタンド、そこは血濡れた”狩場”だった。

絶望の一夜が幕を開ける――――。




製薬会社のSNS担当であるアリスは、不倫相手の同僚と共に帰路に就こうとする。
が、山道を行く中でガス欠になり、山道の中に佇むガソリンスタンドに立ち寄ることに。

ガソリンスタンドの中には誰も居ない。
買ったコーヒー代を置いて店を後にしようとしたアリスだったが、突如何者かに肩を撃ち抜かれる!!!
間髪入れずアリスは銃弾の標的にされ、様子を見に来た不倫相手も射殺されてしまう!!!

スマートフォンも撃ち抜かれ、見せの中で身動きが取れなくなったアリス。
近くにあったトランシーバーの声の主に助けを求めるが、その声の主はアリス達を狙撃するスナイパーの声だった。

謎のスナイパーの標的にされたアリス。果たして、彼女の運命や如何に。




深夜のガソリンスタンドを舞台に、謎のスナイパーに狙われたヒロインの恐怖の一夜を描いた、サイコ・スリラー。
「ハイテンション」「P2」「マニアック(2012)」を手掛けた、アレクサンドル・アジャ制作&フランク・カルフン監督のタッグが放つ最新作。
気が付いたら一週間限定(!)で近所で上映されてたので、滑り込みで見に行ってきました。


本作は2016年のスペイン映画「シャドウ・スナイパー」を原案としている。
狙われる主人公が男性から女性に変わったものの、「深夜のガソリンスタンドでスナイパーに狙われる」という内容はオリジナル版と同様。
(外にいる子供にペーパーに文字を書いてメッセージを伝える場面等も忠実に再現されている。)
しかし、自分はオリジナル版をかなり前に鑑賞しているのだが、正直な所褒められた出来ではなかった。
というのも、オリジナル版は最初こそ思った以上に緊張感があったものの途中からダレてしまい、クライマックスに突入するかと思ったらそのまま投げっぱなしで終わってしまうという、挙げて落としっぷりが酷すぎる映画だったのだ。

そんなアレな映画がまさかまさかのアジャさん制作でリメイク!!!
しかしいくらアレクサンドル・アジャさんのチームいくら信頼できる逸材とはいえ、元ネタはあのトランスワールドアソシエイツ(TWA)から配給されてたようなヤツだぞ!!!!!?大丈夫か!!!???
(本作の配給も「メタルマン」で知られる(株)トランスフォーマーだけど。w)


そんなこんなで不安になったが、「ダラダラした前置きなんぞ要らんよな!」と言わんばかりに直ぐにサバイバル展開になだれ込み、ヒリヒリする内容でアッサリ引き込まれた。
まさか、ちゃんと面白くなってたとは。w


話に関しては「ガソリンスタンド内でスナイパーに襲われどうする!?」というどシンプルな話で、まぁそこら辺はオリジナル版から殆ど変わらない。
とは言え上記の通りテンポは良く、一気にサバイバル展開になだれ込み、ハラハラドキドキでスリリングな攻防がしっかり描かれる。

何といっても、百発百中なスナイパーライフルで狙撃される時のヒリヒリ感の凄い事。
映画館で見たのもあるが、スマホに手を伸ばしたり少しでも顔を出そうとする等の隙をちょっとでも見せたらスナイパーライフルの弾丸で撃ち抜かれる情け容赦ない展開は緊張感満点。
物陰に隠れていればまだ安全ではあるし、ヒロインも店の中にある物品を活用しどーにかしようとするが、遠くから狙撃されてるのでそれでも一時凌ぎにすぎない。

一応、異常を察知してくれる通りすがりの人も居るが、彼らも容赦なく狙撃されワケも分からず殺されてしまうので、助けにならない。
「どうあがいても絶望」とはまさにこの事。

なお血みどろホラーで知られるアジャさん制作だけあって、弾着はかなりスプラッター。
傷の流血表現は血まみれで生々しい。
まぁそれでも同制作陣の過去作に比べればグロ度はそこまででもないが。
(でも最後のトドメの刺し方は中々。w)


一方、中盤からは無線越しのスナイパーとの会話が多くなり、そこら辺はオリジナル版同様に話が停滞してしまい、元ネタの難点を受け継いでしまった感がある。
スナイパー側はヒロインに「お前らみたいなのの所為でこうなったんだ」「自分でも気づかない内に罪を犯してるんだ」と捲し立てる。
確かにヒロインも訳アリな人間ではあるものの、ぶっちゃけ銃の腕前が良いだけのSNSとかに悪い影響受けた異常者がイキり散らしているようにしか見えないんだよな…。(実際そうなんだろうけど)
ぶっちゃけ出てくる人がみんな”普通の人”だから上手くいってるだけだし、そのスナイパーの正体もぶっちゃけあまり強そうに見えない。
もし狙った相手がアクション映画に出てくるようなマッチョで強そうなタフガイだったら多分取っ組み合いの時点で圧倒され秒殺されてただろうし、それどころかランタイムの10~30分も掛からずに反撃され負けてたと思うぞ。
(まぁ、アクション映画の常人離れした連中とリアルな人間しか居ない本作を比べるのは酷なんだろうけど…。)


それでも投げっぱなしだったオリジナル版(爆)とは違い、本作ではちゃんとクライマックスでちゃんと決着を描いている。
反撃の末路はまぁお察しだし、ラストもよくあるオチなんだけど、それでも終始ハラハラドキドキさせて面白く、最後までスリリングに魅せてくれるのは流石アジャさん制作だけある。
ぶっちゃけ犯人のアレコレとかは投げっぱなしもいいとこだけど、まぁクライマックス直前で終わったオリジナル版に比べればまだ許せる。(おいおい)


まぁ正直ワンシチュエーションスリラーとしての捻りは殆どないし、元が元だけに地味~な内容ではあるものの、アジャさん&カルフンさんの作りの上手さのお陰で程よくハラハラドキドキ出来る佳作に仕上がってました。
やはり内容が似てても、演出や作りの上手さでここまで面白い内容に出来るのだから、アジャさんとその制作陣は流石ですね。
(まぁ元の作品はトランスワールドアソシエイツが配給してる時点でクオリティはお察しだし。w)

もう殆ど上映終了してて、このままDVDor配信になだれ込みそうな作品ではあるが、取り合えずアジャさん絡みのホラー&サスペンスが好きな人ならそれなりに楽しめると思うので是非。

因みにオリジナル版は…まぁぶっちゃけトランスワールドアソシエイツ配給のアレな映画なので別に見んでええです。w
(ってか、俺どんだけTWA配給を引き合いに出してんだよ。
気が付いたらTWA配給絡みだけで過剰反応してるし、もしかして俺TWAが好きなんかな?w)