たりほssk

タバコ・ロードのたりほsskのレビュー・感想・評価

タバコ・ロード(1941年製作の映画)
4.0
すごかった。衝撃で脳みそひっかきまわされた感じです。
極貧の農民であるジーターとその家族。もうめちゃくちゃ。都合のいい時だけ神を頼り、ただやりたいように行動する。追い詰められても将来のための努力もしない。農業が好きで土地が好きで、というのはわかるんだけど、皆が脈絡もなく次々とやらかして、それがまたすごくおもしろい…。そしてさらに周囲の人々も巻き込んでいくのもまた興味深くて、いったいどっちの方向に向かっているのか、これストーリーが破綻するんじゃないかと冷や冷やするくらいでしたが、最終的に全体としてまとまっているのは見事としか言いようがありません。
もしかしたら自分はいわゆる歴史上に現れる「極貧農民」について、慎ましさとかまじめさとか勝手な幻想を持っていたのかもしれません。いや、それよりもジーターたちが人間の本質を具現化しているのでは…。こういうずるさや怠け心を持っている人間像こそが生の人間なのかもしれないと思い始めているところです。言い換えればそういう人間像を貧しい農民に当てはめてくるところ、ジョン・フォード監督の鋭さを感じます。
果たしてジーターは生存競争に生き残れるのか?その後が知りたいです。

自分の価値観がひっくり返されるような体験ができる映画は本当に貴重で、これこそが映画鑑賞の醍醐味です。見てよかったー!
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