たりほssk

幻滅のたりほsskのレビュー・感想・評価

幻滅(2021年製作の映画)
4.2
情報操作、ステルスマーケティング、フェイクニュース…現代にもつながるジャーナリズムの問題とオーバーラップして描かれているためとても興味深かった。
それにしても、19世紀のパリ社交界がこれほどまでに退廃していたとは…すべては金次第で、芸術の価値も真の人間性も何もない…。素直な野心を抱いてやって来たリュシアンだが、結局はその渦に飲み込まれる。戦い破れ、もてあそばれて、唯一純粋に愛してくれたコラリーも失い、もはや最後に残るのは虚無のみ…これほどまでの虚しさが他にあるだろうか……

しかしこの物語には救いがあった。ナタンの存在である。
つまり、この状況を客観的にとらえる登場人物がいることで、この物語はかすかな希望を帯びてくる。過去を振り返り、検証すること、それは未来への指針となり得るものだ。この作品で描かれた問題は、現代にも通じるものであるために、その視点は私たちにも一考を促すものとなる。ナタンという人物の配置は本当に重要だと思った。

そして、当時の堕落し退廃した世界を、これほどまでに絢爛豪華に描き切るところに感動した。素晴らしい映像美だった。
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