めしいらず

沈黙のめしいらずのレビュー・感想・評価

沈黙(1962年製作の映画)
3.7
言葉が通じない異国を姉と妹と彼女の息子の3人が旅する途中のホテルで、抑圧的な姉と奔放な妹の間にずっとくすぶり続けていたわだかまりが露わになっていく。性に対する考え方の相違。酒に溺れつつも理性的であろうとする姉は妹の性的なだらしなさを物言わず蔑み、奔放な妹はプライドが高いくせに悶々とした姉の前で連れ込み男と交合うことで侮辱する。放ったらかしの息子はホテル内を徘徊しながら様々な大人たちの世界を覗き見ている。翻訳家であっても言葉が通じない異国ではただただ無力な姉と、セックスの快楽に耽るのに端から意思疎通を必要としていない妹。言葉が通じようと通じまいと意思疎通は本人たちがそれを必要とするかどうか次第である。薄情な妹に置き去りにされる姉が死の床で甥にその異国の”精神”を意味する言葉を手渡して幕。
”神の沈黙”三部作の最終編。直接神について言及される訳ではないけれど、言葉や意思が疎通する困難さにそれが仮託されているのかも知れない。三つの中では最も観やすいけれど、分かんなさには変わりなし。ホテルの長い廊下を奥行き方向に見せる画が印象的で、「シャイニング」辺りに影響していそうな気がする。
再鑑賞。
めしいらず

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