emily

サガン -悲しみよ こんにちは-のemilyのレビュー・感想・評価

3.3
1954年、弱冠18歳で作家としてデビューしたフランソワーズ・サガンの伝記映画。「悲しみよ こんにちは」は世界的ベストセラーとなり、自堕落な生活を送るようになる。恋愛、結婚においてはトラブル続きで、孤独を抱えお酒におぼれていく日々・・

 地位も名誉も手に入れ、それは他人からみれば”幸せ”を絵に描いたような生活であろう。仲間に囲まれ、高級車に乗り、男もとっかえひっかえ、カジノやお酒、自堕落な生活と、物書きで彼女は埋まらない孤独を埋めていた。ふとした表情に見せる女のか細さ、繊細な仕草や表情を見事に演じ、お金の動きが大きい中で常に孤独にさいなまれているのが随所で感じられる。逆にその孤独感があるからこそ言葉が降ってきたのかもしれない。

 ストーリーは目まぐるしく展開されるが、シンプルに必要な物だけを詰め込んであり、非常にわかりやすくまとまっている。ピアノの調べに乗る彼女の言葉だけが真実を語っている。徐々に借金にまみれ、満たされない心はドラッグで埋めるようになっていく。どんどん追いつめられていく繊細な心は非常に痛々しく痩せていく体や表情で見事に再現されており、サガンを演じるシルビー・テステューの演技が光る。

 手に入れば入るほど求めてしまう。しかし本当に欲しい物は求めて手に入る物ではない。それを手に入れるには自分から与える必要がある。孤独で愛されたいと思うなら、まずは自分から捨身で愛すしかないのだ。
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