マヒロ

クリムゾン・タイドのマヒロのレビュー・感想・評価

クリムゾン・タイド(1995年製作の映画)
4.0
ソ連にて過激派の指導者が核ミサイル保有施設を乗っ取った上、アメリカと日本への核攻撃を示唆し各国は緊張状態となる。アメリカは対応として原子力潜水艦を出撃させることとし、ベテランのラムジー(ジーン・ハックマン)を艦長に、大学出のエリートであり実戦は初めてのハンター(デンゼル・ワシントン)を副艦長として出航する。現場で揉まれ続けた感覚主義のラムジーと思慮深く理性を持って動くハンターはいまいち相性が良くなかったが、ソ連の潜水艦と出くわし戦闘になったことをキッカケにその溝は決定的なものになる……というお話。

あわや核戦争という世情に加えて、潜水艦という閉鎖空間内でも意見の食い違いから派閥争いが起こり、内でも外でも一触即発の状態というなかなか息苦しい作品。
常に潜水艦内ということで画面があまり変わり映えしないが、それをカバーするかの如く異様にテンポが良いのが特徴。序盤のニュース映像で世界観を説明、面接の場面でラムジーとハンターの性格の違いを見せたところでささっと潜水艦に乗り込み、そこからは次から次へと展開を転がし続けてこちらを飽きさせない。
また、画面作りも工夫しているところが見られて、計器の赤や緑のランプらモニターの映像なんかがやり過ぎなくらい周りを照らしており、登場人物が『サスペリア』かってぐらいベタベタの赤や緑に染まっているのが単調になりがちな映像を彩っていて、シンプルながら良かった。画面の文字までが浮かび上がって顔に照射されてるのは流石に行き過ぎてて笑ってしまったが。

話の争点は、通信異常で途中で途切れてしまった本国からの伝達が「ミサイルを発射せよ」なのか「ミサイルを発射するな」なのか?というところで、今すぐにでもミサイルでソ連側に攻撃を仕掛けないと全滅するかもしれないとするラムジー側と、明確な指示がない限り動くべきではないとするハンター側で派閥が分かれることになる。普段の自分だったら間違いなく理性派のハンターに付きたいけど、一方で待ってるだけでは自分が死ぬかもしれないという状況では何がなんでも船員を守ろうとするラムジーに付いてしまうかも。実際劇中でもどちらが正しいのかは分からず(映画的に何となく察せるが)、最後までヒヤヒヤさせられることになる。

後の『アンストッパブル』なんかにも通じる、ワンシチュエーションをひたすら勢いで見せてくれるトニー・スコットらしい楽しい一作だった。

(2023.120)
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