亘

赤い風船の亘のレビュー・感想・評価

赤い風船(1956年製作の映画)
3.9
【友情】
少年パスカルは学校への通り道で赤い風船を見つける。彼が風船をずっと離さずにいるといつしか風船がなついてきて、常に一緒に遊ぶようになるが、悪い少年たちが風船を狙い始める。

アカデミー賞最優秀脚本賞を獲った35分のショートフィルム。劇的な展開があるわけでもないが映像が美しくて心が落ち着くしずっと見ていられて、BGV(バックグラウンド・ビデオ)にも最適な作品だと思う。

本作の特徴は、温かみと色使いだと思う。パスカルの純粋さや風船との友情のほほえましさは心が温まるし、なにより風船の色がパリの街の中でアクセントになっている。

赤い風船は、まるで意思があるかのように動いてパスカルの元に向かおうとする。時に青い風船に恋したりもするけどずっとパスカルといるのだ。ただその風船を悪い少年たちに狙われ中盤はずっと逃走劇になる。この悪い少年たちの仕打ちは、子供や人間の残酷さを映しているようで、本作で唯一の温かみのないシーン。赤い風船の最期もゆっくりとしぼんでいてまるで生き物のようだった。

それでもラストシーンは、まるで風船からパスカルへの感謝のようでファンタジーだしカラフルで見ていて楽しい。
落ち着いてずっと見ていられる作品だった。

印象に残ったシーン:パスカルが風船をもって走るシーン。カラフルな風船が飛ぶラストシーン。
亘