ふき

007/ダイ・アナザー・デイのふきのレビュー・感想・評価

007/ダイ・アナザー・デイ(2002年製作の映画)
3.0
ピアース・ブロスナン氏の007シリーズ最終作。
前作でジョージ・レーゼンビー氏のボンドレベルにシリアス方向へと振った舵を、今度はロジャー・ムーア氏のボンドかと思うほど非シリアス&非リアリティに振り切った作品。
二一世紀初頭のCG時代ならではの絵作りで、ステルス機能で消えるボンドカー、流氷と津波のサーフィン、イカルスの超レーザーによる破壊などなど、CGが多様されている。しかしその多くが、『スターウォーズ』や『マトリックス』や『ハリー・ポッター』で体験した「初めて見る映像体験としてのCG」ではなく、「役者やスタントマンが命を張って演じていたアクションの置換としてのCG」なので、手に汗握るアクションがただの作り物になってしまった。サーフィンや輸送機の車輪に飛び乗るシーンなど、一〇年前なら本当にやっていただろう。劇場公開当時に「CG全盛期の今、もうボンド映画は無理なのかな」と感じたのを思い出す。
また、従来のボンド映画で使われてきた手法でも、氷上のF1カーのミニチュア感バレバレのカットや、失笑レベルの敵役の装備など、過去作の水準に達していない箇所が散見される。

もちろんよいところもたくさんある。ストーリーは概ね今まで通りのボンド映画だし、ライセンスを剥奪されて以降の展開は『消されたライセンス』より本作の方が描けていると思う。ボンドカーのステルスギミックを描くCGに関しては、現在の水準からしても素晴らしい。ボンドカーとザオカー(?)の対決は純粋にワクワクするし、「この世界には秘密兵器満載のクルマの需要があるのか?」と真顔になる面白さもある。四〇周年であり二〇作目ということで、いたるところに過去作のオマージュがあるのも嬉しい。特に『ゴールドフィンガー』は多く、同作が好きな私はそれだけで加点要素だ。
ふき

ふき