Habby中野

男はつらいよ 寅次郎純情詩集のHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

博の息子への期待と寅さんの見栄から始まり、輝かしい笑顔の満男、娘と博物館へ行く社長から、富者の没落と仮住まい、一夜の饗宴と別れと罪。一貫して未来への希望と現在の期限を象っている。
生には期限があり、終われば終わる。他者の未来に託すこと、賭けることは欺瞞──と思っていたが、それでこの”期限”という概念がなくなり、少し楽に生きれるのかもしれない。教育の正体は、親子の正体はこれだったのか。映画の正体はこれだったのか。
笑って笑って笑う京マチ子無双の中、期限付きのその笑顔を生み出した寅さんは、娯楽映画そのものと化していた。クリスマスは、死と再生の祭。
そして最後は葬式からなだれ込むように旅立ち、彼女の娘と再会し、娘は生徒たちへ未来を託す。他者が生きることによって私も生きられるのかもしれない。『男はつらいよ』はここで、人生の映画から、人生に対する映画になった。
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