アギゴン

夢売るふたりのアギゴンのネタバレレビュー・内容・結末

夢売るふたり(2012年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

若夫婦で営む小料理屋が営業中に火事を起こしてしまう。客の入りも良く、ようやく店も軌道に乗り始めた矢先の災難に、市澤貫也と里子は全てを失ってしまう。貫也は塞ぎ込み、酒やパチンコに逃げる毎日。片や里子はすぐにラーメン屋で働き始め生活を立て直すため必死に仕事をする。
そんな最中、貫也は外でたまたま出会った女と、酔った勢いで一夜を共にしてしまう。酔いが覚めて気づけばなんと、店の常連客だったことに気づく。店を失ったことを知り、借金返済に困っていることを聞いた女は、貫也にすんなりと金を差し出す。
その金の出処は、事故で亡くなった不倫相手の家族からの手切れ金だった。彼女にとってはどうでもいいものだった。貫也との一夜も悲しみと悔しさで、深酒をした挙句の出来事であった。思わぬことで金を手に入れた貫也。
里子に喜び勇んで「金の工面が出来た」と報告。しかし、女の勘は鋭く貫也の一夜の出来事を暴いてしまう。
夫からの裏切りに腹を立てるも、里子は
寂しい女の身も心も優しく癒してしまう貫也の隠れた才能を見出し、店の再建の資金集めの為に結婚詐欺を企て、次々と女性たちを騙していく。
妻の描くシナリオ通りに、女性に近づき
心と金を奪っては去る…奪っては去るの繰り返しに何時しか貫也の気持ちも荒んでいく…
貫也と女達の関係を見守りつつ平然を装う里子自身の心も次第に少しづつ崩れ始め、何とも言いようのないの感情が込み上げてくる。夫婦の夢の為に、女達に束の間の夢を売るこの二人の行先はいったい何処へ向かっていくのか…。


〜感想〜
この作品は結構考えさせられるストーリーでした。「女ってやっぱり分からないよ〜😓」って男の人に言われそう…。だけど、里子のあんな感情は分からなくは無いです。自分自身「私なにやってんの…」って思うんだろう。最初に詐欺を思いついたのは里子だけど、実際貫也が他の女性に優しく接している姿を見る度に胸が苦しかったに違いない。「だけど…これは嘘の芝居だ…」と嫉妬心を押し殺して自身の気持ちを騙していたんじゃなかろうかと。
貫也は本来真面目で、到底あんな事が出来るタイプではないと思うけど、妻に対してずっと今まで抱えてきた負い目もあってか、売春まがいの事をさせられても気持ちに蓋をして、詐欺を行っていたのかなと考えてしまいます。劇中ではどの女性に対しても、本当に誠実に付き合っていた様子で、ああいった貫也の真摯な態度にも里子の嫉妬が倍増していたのかも。視点を変えると、倦怠期の夫婦の変わったプレーにも感じてしまったけど、性欲が満たされないまま置き去りになった里子の自慰行為を見たら、やはりそんなプレーでは無さそう。
里子はいつから貫也に素直に愛を表すことが出来なくなってしまったのだろう。嫉妬して泣き叫ぶ事が出来たなら、どんなに楽だったのか。騙されている女性達より、この夫婦の方が段々気の毒にさえ思えてきました。夫婦間の感情や様々な人物の人間模様も描かれていていて、なかなか面白い作品でした。
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