マヒロ

都会の牙のマヒロのレビュー・感想・評価

都会の牙(1949年製作の映画)
3.5
会計士のフランク(エドモンド・オブライエン)は、休暇を利用して一人旅行に出かけることにする。同僚かつ恋人のポーラもおらず羽を伸ばすフランクは、たまたま知り合った人達に誘われて宴会に参加するが、翌朝突然体調を崩して医者に診てもらったところ、身体から致死量の毒物が検出され余命わずかであると告げられる。絶望するフランクだったが、自身の周りで不可解な死が起きていることに気がつき、毒を盛った犯人の正体と目的を突き止めるために奔走する……というお話。

殺人課に現れた主人公フランクが「殺人事件が起きた、被害者は自分だ」と語る不思議な冒頭からなかなかに引き込まれる一作。
旅行で浮ついた気分から一転、もう命が助からないという状況に叩き落とされるという絶望的な状況だが、ヤケクソになったのかやたらと行動力を発揮し、あちこち走り回って真相を突き止めようとするバイタリティが凄い(全然作風は違うがステイサムの『アドレナリン』思い出した)。
毒を盛られてはいるがいつ命を落とすかというのは明確ではなく、死が目前に迫っているのにタイムリミットが分からないというのが地味に恐ろしい。何だったら映画途中で死んでしまってもおかしくない話運びなのでハラハラさせられる。ちなみにこの“毒”について、劇中では「蛍光毒」という名前で紹介されており、いかにも本当に恐ろしいものですみたいな説明まで入るが、どうやら架空のものっぽい。

主人公が死ぬというところが、設定上そうというだけであまり画面上には現れてこないのが気になるところ。もっと具合が悪くなったりしそうなもんだが、最後の最後まで結構ピンピンしているので、こちらが想像でハラハラしている以上の緊張感が見えてこないのがちょっともったいないかなと思った。話自体は普通のノワールものなので、毒を盛られたという設定がもっと話に活きてきて欲しかったかも。

(2023.128)
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