コーカサス

愛しのシバよ帰れのコーカサスのレビュー・感想・評価

愛しのシバよ帰れ(1952年製作の映画)
3.2
ドクター・デレイニー (ランカスター)と妻のローラ (ブース)は学生時代に恋に落ち、直ぐに結婚、子供を身籠るが死産してしまい、以後決して幸せとは云えない日々を送っていた。
ドクターは結婚によって医学部を中退したことを悔みアルコール依存症となり、一方ローラは行方不明になってしまった愛犬の帰りを信じて待っている。
そんなある日、下宿部屋を探していた女学生のマリー (ムーア) を快く迎えると、夫婦は彼女に若き日の自分たちを重ね、いつしか暮らしに変化をもたらす。

過去を消したいドクターと輝かしかった過去にすがるローラのすれ違いが、悲しくも痛々しい。
さらに、あれだけ物静かだったドクターがついに禁断の酒に手を出してしまい、人が変わったように暴れ狂う姿は、いかにアルコール依存症が恐ろしい病であるのかを見せ付ける。

タイトルの“シバ”とは、ローラが可愛がっていた子犬の名前だ。
それは謂わば亡き子供の分身とも云える大切な存在を意味している。

互いのすれ違いを認め合い、行くべき道を決めたふたりは、もう帰らぬシバを考えず、今の生活をしっかり見つめ生きて前へ進むだろう。

121 2021