コーカサス

白い巨塔のコーカサスのレビュー・感想・評価

白い巨塔(1966年製作の映画)
3.7
『戦争と平和』や『松川事件』等、社会派作家として知られる山本薩夫監督が、山崎豊子の代表作を映像化。

山崎の「そこに重厚な人間ドラマがあるから」の言葉通り、関西のある大学の医学部を舞台に、教授の後任選挙、誤診、不正、裏工作といった、病院内延いては日本医学界の腐敗に鋭くメスを入れた傑作である。

“唐沢版”を全話録画保存し“名作”と信じる世代としては、彼の演じる財前を見る度、そのアンチヒーロー的な魅力と、さらには良心さえ垣間見えるキャラクターにどことなく惹かれてしまうのだが、この66年の“田宮版”にはそれらが一切感じられず、終始冷酷でエゴイストなスタンスに圧倒された。

センセーショナルな猟銃での自殺で世を去ったこの二枚目俳優に、医学界の権力の頂点を登りつめるその直前に無念の死を迎える『白い巨塔』の財前五郎役が重なってみえるのはなぜだろう。(「男優ベスト150」文藝春秋より)

Amazing Grace. われをもすくいし。
まさにその通りかもしれない。

101 2023