チッコーネ

ベビイドールのチッコーネのレビュー・感想・評価

ベビイドール(1956年製作の映画)
3.7
住民について知り尽くした故郷・ミシシッピを舞台にテネシー・ウィリアムズが書き上げた脚本(原作)は、息が詰まりそうなほど生々しい。
水面下で激しく憎しみ合う人々の姿は、まるで狂熱に浮かされているかのよう。
登場人物たちの強烈な灰汁の強さは、ドストエフスキー文学にも通じるものがあった。

そしてキャロル・ベイカーのあどけなさを残す美しさ(当時すでに26歳)が、このうえなく印象的。
監督の演出へ的確に応える彼女の演技は素晴らしく、本作でセックス・シンボルの烙印を押されてしまったのが気の毒に思える。

あまりにも殺伐としていて、何度も観たくなる作品とは言えないが、ベビイドールとシルヴァが屋内で繰り広げる『追いかけっこの場面』はエロティックで、どこか滑稽。
音楽も陽気で、良い息抜きとなっている。