フライ

死刑弁護人のフライのレビュー・感想・評価

死刑弁護人(2012年製作の映画)
3.9
日本で一番嫌いな弁護士とアンケートをとったら、間違い無く上位に名前が上がる安田好弘弁護士のドキュメンタリー映画。
何故彼が死刑確定とも思える凶悪犯罪者を弁護するのか?何故死刑制度反対なのか?ニュースでの記者会見を見ても、全く良い印象は無かったし、どう言った人物なのか、以前からとても関心があっただけに興味深く鑑賞できた。

安田好弘弁護士の過去と、これ迄彼が弁護した、誰もが一回は聞いた事のある様な凶悪犯罪の、犯罪者達の過去や犯罪経緯、そして安田弁護士がオーム真理教裁判中逮捕された驚きの理由など、色々な意味で衝撃を覚える話ばかりだった。

どの犯罪も余りのおぞましさに、犯罪者に対し、関係のない自分でさえ殺意を覚えるものばかりだったが、安田弁護士の話を聞くとなぜ矢面に立ち彼らを弁護するのか分かった気がした。
犯罪者の過去、経緯、後悔の念、それを知る安田弁護士の犯罪者への思い、そして真意とも思える記者のゲスな質問に対しての言葉は、「あらゆる真実を表に出す事が真相究明と贖罪、同じ様な犯罪を出さない為」と言う発言に頭を殴られた気がした。安田弁護士の様な人が、真剣に被告達と向き合い、どんな人物であっても彼らを信じ戦う人いる事、且つ真摯に向き合い真実を隠さない事が、真相究明や犯罪の少ない未来に繋がるのではないかと思えた。

本作を見て思ったのは、人生と家族を犠牲にし、凶悪犯罪者の弁護をする安田弁護士を自分の中に悪として植え付けたのは、悪意のあるマスコミの報道であり、権力を振りかざす検察なのだと分かった。そして何より自分自身の弱さと軽率さなのだと感じた。
一番強く感じたのは、彼が本当に戦っているのは、絶対勝てない悪意のある国家権力と法律、一部の一般大衆受けするネタを一方的にばらまくマスコミや日本に根強く残る差別や偏見なのだと感じた。

相変わらず東海テレビドキュメンタリーの凄さを痛感させられた作品だった!
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