このレビューはネタバレを含みます
戦争映画の指標として、その時代に生きた人たちが大きく理不尽な力によって人殺しを余儀なくされた時、それを嬉々とする人、受け入れる人、反対する人、逃げ惑う人など、極限状態に陥った時に垣間見れる人間性とその背景が如実に描写されているか、があると思います。
この映画は、独ソ戦を舞台として、緊迫した両国の兵士の感情、人間性が存分に描かれています。
この映画を観終わった時、思想によって人間はここまで残虐になれるのか、と考えさせられました。とくに主人公である少年の目線で描かれていることによって、観る側からすればさらに恐怖を掻き立てられることになります。あどけない少年が見たものは、「戦争」を超えた「狂気」だったのでしょう。
少年が砂に埋もれていた銃で最期に撃ったものは、この地獄の元凶であるファシズムの親玉ですが、途中で撃つのを止めたのは、最も憎むべきものはその先にあるもの、と気づいたからであり、純粋な子どもだからこそ、この理不尽さに気づいたのだと思います。
大量虐殺が起こる原因・本質は何なのかを問う戦争映画の金字塔のような作品でした。
