亘

スティングの亘のレビュー・感想・評価

スティング(1973年製作の映画)
4.2
【壮大ないかさまエンターテイメント】
詐欺師ジョニーは、ある日大物ギャング・ロネガンの金を奪う。その報復で師匠を殺されたジョニーは、ロネガンへの復讐を誓う。ペテンにペテンを重ねる壮大で周到な計画が始まる。

いかさまと騙しにまみれた復讐ストーリー。今作の登場人物はほとんどが詐欺師・ペテン師で本来悪役であるんだけど、BGM"The Entertainer"の通り今作で、いかさまの張り合いのエンターテイメント。敵がいかさまを仕掛ければ、こちらはそれをいかさまで越えていくという具合に「そう来たか」「それもいかさまか」と心地よく楽しく騙される作品だと思う。

今作は[Players(プレイヤーたち)]・[The Set Up(段取り)]・[The Hook Up(引っ掛け)]・[The Tale(作り話)]・[The Wire(電信屋)]・[The Shut Up(締め出し)]・[The Sting(とどめの一撃)]という風に段階ごとに分かれているからわかりやすい。プレイヤーの説明では、復讐に至るまでの経緯が描かれ、その後計画の様子が描かれ、計画が始まる。この分かりやすさもまた騙されるのに集中できるポイントだと思う。

The Players(プレイヤーたち)~The Set Up(段取り)
師匠ルーサーを殺されたジョニーは、復讐を誓うが相手がNYの大物ギャングだと知る。そこで共に戦う仲間を求め大物詐欺師ヘンリーを訪ねる。しかし彼はFBIから追われシカゴに逃げすっかり老いぼれたようだった。それでもヘンリーは友人の復讐をするため仲間を集めロネガンをおびき出しと復讐を計画する。それはロネガンの主導する列車内での賭博から彼の気を引き、嘘の電信賭博場をわざわざ建設して彼を連れてくるというものだった。

The Hook UP(引っ掛け)
ここから作戦実行に移る。まずは列車内でロネガン主導のポーカーにヘンリーが参加。すっかり彼を油断させた状態でヘンリーがぼろ勝ちしロネガンの気を引く。一方でジョニーはヘンリーへの反逆者を装いロネガンに近づく。ここの見どころは、ヘンリーとロネガンのポーカー勝負。互いに掛け金を吊り上げ合い、意地を張り合う。観客は2人の手札を見られるし目が離せない。そこからのいかさまの掛け合いも意外性があって楽しい。

The Tale(作り話)~The Shut Out(締め出し)
ロネガンを上手くおびき出すとジョニーは、ヘンリーの持ついかさま電信賭博場へと連れ出す。この電信賭博場は、建物の内装を変え、電信屋も仲間に装わせ、競馬の賭けの方法も自分たちで作るという大掛かりなもの。ジョニーはロネガンにいかさまの方法を教えるけど、それもまたいかさまの中で行われている、という感じで全てが全ていかさまであって、仕組みを知ると笑ってしまう。彼らの計画は一見うまくいってるようだけど、一方でジョニーを追うスナイダー刑事やヘンリーを追うFBIが現れて雲行きが少し危うくなる。

The Sting(とどめの一撃)
計画の最終段階。ロネガンに超高額の賭けをさせる。ロネガンにしてみればいかさまで大儲けなはずなのに、ある失敗で彼はその機会を失う。これでジョニーたちが金をだまし取るのかと思いきや、そうはすんなりいかない。ヘンリーを追うFBIがやってきてジョニーがFBIに肩入れしていたことが発覚、銃撃戦になる。このシーンでも十分意外で驚きではあったけど、何より驚くのはその後のどんでん返し。詐欺師たちの一仕事終えた感じは劇団のようだった。

印象に残ったシーン:ヘンリーとロネガンのポーカー。電信賭博場でみんなが芝居を始めるシーン。最後に一仕事終えるシーン。
亘