ぴのした

ヴァージン・スーサイズのぴのしたのレビュー・感想・評価

ヴァージン・スーサイズ(1999年製作の映画)
3.8
ソフィアコッポラの描く少女たちの物語。厳しい両親の家に生まれた5人の美しい娘たち。彼女らに近づきたい少年たち。1人の少女の自殺をさかいに、少年少女は少しずつ変わり始める。

「ソフィアといえばガーリー映画」と言われるのも納得。登場人物たちの可愛らしさや構図の魅力もさながら、ソフィア映画にしては展開が早くて見やすいのも特徴。

物語的には少女たちがメインなんだけど、少女たちに憧れ、そして失った少年たちの目線から少女たちが語られるのが面白い。

この映画の核心となっているのは結局、「少女たちはなぜ自殺しなければいけなかったのか」というところにあると思う。

しかし明確な答えは出てこない。母親は確かに厳しかったけど、「死ぬしかない!」って切羽詰まった自殺には見えないし。少年たちも彼女たちの思い出に浸りながら、大人になっても悶悶と彼女たちのことを、その胸の内を考えている。きっと、テレビのレポーターが知ったかぶって解説できるような論理的な理由はないんだろうな。

強いて自殺の理由があるとすれば、冒頭の一番最初に死んだ少女の言葉のように、「13歳の少女だったから」なのかもしれない。好奇心にあふれ、男の子と遊んでみたい。ロックを聴きたい。タバコを吸ってみたい。ちょっと悪いこともしてみたい。

少女から大人の女性に変わる思春期の少女特有の外の世界への強い好奇心。それを封じられたときに、彼女たちはふとセンチメンタルになって死を選んだのかもしれない。あるいは、「自殺をする」行為そのものが「ちょっと悪いこと」として彼女たちの好奇心をくすぐったのかもしれない。

ソフィア最新作のビガイルドとこの映画がよく比べられるから見てみたんだけど、たしかに外界に憧れる女の園の少女たちの物語という点ではよく似ている。

ただ、ビガイルドが少女たちの中に潜む「大人の女性」性に注目しているのに対し、この映画は逆に徹底して思春期の少女たちの「少女性、処女性」に注目している。対照的で面白い。

あとこの映画に出てくるキルスティンダンストがまじでかわいい。5人並んで出てきても目が釘付けになる。でも同じキルスティンダンストを含む美女集団が出てくるビガイルドでは、目が釘付けになるのは今度はキルスティンじゃなくてエルファニングなんだよな。これはまあ素直に、美しいキルスティンダンストよりもさらにエルファニングが可愛いってこともあるんだけど、監督の演出の仕方もうまいんだろうな。

自分が選んだカードがマジシャンに見つけられるように、「この子かわいいやん!他の子を好きな人もいるだろうけど、個人的にはこの子が推し」って思ってた子がナチュラルに物語の中心人物になっていく。自分で推しを選んだように見えて、その実ソフィアに選ばされているのだ。