たく

日本橋のたくのレビュー・感想・評価

日本橋(1956年製作の映画)
3.8
泉鏡花原作の戯曲の市川崑監督による二度目の映画化。
日本橋を舞台に芸者の意地の張り合いと色恋沙汰が繰り広げられて、美しい映像と情緒あふれるBGMが濃厚な味わいだった。

何といっても淡島千景演ずるお孝の魅力が抜群。冒頭の朝帰りから気性の激しさの中に女の色気を自然に感じさせるのが上手く、後半で先生に惚れてからのしおらしさとのギャップが素晴らしいし、全編通して所作が美しくて見とれた。母親役の浦辺粂子がまた良くて、見事な手つきでお孝の着物の帯を巻きながら会話するシーンは目が釘付けになったね。

お孝にまとわりつく熊の皮をかぶった伝吉の異様な執念がなんとも不気味。もう頭がおかしいとしか思えないんだけど、彼と正反対のキャラで学問を修めて医学士となった葛木も姉の犠牲の上で成り立ってるし、それぞれの登場人物が人間の業を象徴する存在なんだと思った。火事のシーンはちょっと「ミナリ」を連想。
冒頭で登場する亡霊が館に憑りついて、関わる人間の運命を狂わせていく話とも思えたね。

デビュー間もない川口浩が悪ガキ集団の一人として登場するのはびっくり。若尾文子もまだまだ幼くて、お付きの役にぴったりだった。
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