Cisaraghi

夜も昼ものCisaraghiのレビュー・感想・評価

夜も昼も(1946年製作の映画)
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このケイリーグラントは、伝記映画のためかお茶目さはかなり抑えめ、表情にサンダーバード的、または腹話術人形的な作り物っぽさが強く出ている点が特徴。自ら歌も歌っている。歌手でダンサー役のジェーンワイマンさん、はしのえみ+テレサ・テンのような親しみやすい容姿と役柄でとてもチャーミングですが、レーガン大統領の元奥様だったのですねえ…。おみ足も魅力的。脇役にもかかわらず、印象が強かった。

映画の中のコールポーターの曲は、流麗なオーケストレーションとクラシカルな歌唱法とバレエによってパフォーマンスされていて、ジャズっぽくはないし、スウィングしているとも言い難い。出演者が、召使い役の2、3人の黒人を除いて、ほぼ全員白人で占められていることもあってか、とても白い。

「ビギン・ザ・ビギン」の後の方のビギンbeguineは、西インド諸島グアドループ島とマルティニーク島発祥の、遅いルンバに似たダンスと音楽の形式のこと、とWikipedia said. この2つの島の住民の大半はアフリカ系なのに対して、この映画で、カリブ風のセットで謎のトロピカルな民族衣装のような格好で「ビギン・ザ・ビギン」を踊っていたのはほぼ白人のみ、しかも基本はバレエというなかなか珍妙なものだった。時代である。なんかこれどこかで見た覚えがあるぞ?と思ったら、昭和日本のオペレッタ時代劇だ。クロスオーバーな珍妙さに、似たテイストを感じるのかも。もちろん、日本映画がハリウッドのレビューに大いに影響を受けているのは言うまでもないだろうけど。

コールポーターは作曲だけでなく作詞もしていて、「機知に富んだ都会的な詞で知られ」とWikipedia said. さすがイェールマン。それにしても、ケイリーグラントの大学生は無理だった(笑)。

夫婦愛の話みたいだけど、実はコールポーターは同姓愛者で、それを承知の上で結婚した奥さんは8歳年上の離婚経験のある女性でパトロンだったらしい、という今ならとても映画向きな部分はさっぱりカットされている。
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