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フラガールのdm10foreverのレビュー・感想・評価

フラガール(2006年製作の映画)
3.8
【雪をも溶かす乙女の情熱】

新年明けましておめでとうございます。昨年中はたくさんの「いいね」やコメントを頂きまして、ありがとうございました。本年も宜しくお願いいたします。

という事で、本年一本目のレビューです。
まだバタバタしていて「劇場初め」は持ち越していますのでDVD鑑賞からスタート。
北海道はここ数日の超寒波につま先まで凍るのではないかとヒヤヒヤしていましたが、こういう時こそ情熱的な映画を見たいもんだと棚を物色して見つけたのが「フラガール」でした。
もう何度も観た気がしますが、キチンとレビューを書いた事がなかったな・・・という事で再見。

やっぱり人が何かに情熱をぶつける様って、見ていて気持ちがいいというか「ウソ」がないですよね。勿論映画ですので役者が演じているのですが、物語の向かうベクトルは基本的に人間が欲している「達成感」「充実感」。
普段の生活の中で色々な制約を受けたり、他人や仕事との向き合い方に辟易している時、自分を明るくしてくれるものって音楽であったり映画であったり色々あると思いますが、僕的には直接的に「頑張れよ」と言われるより、頑張っている人の背中を見る方が何倍も説得力があって、行き着くところの結果が必ずしも成功ではなかったとしても「何かを求めて頑張る姿」にはウソがないんです。そしてそういう姿を見て「俺も頑張るか!」と元気づけられるんです。

そういった意味では、展開がベタであってもこういう「サクセス系」のお話は大好物ですね。今作も「クールランニング」や「ウォーターボーイズ」のような『ステップアップ』映画だな~と思いながら観ていましたが、今作は趣が若干違いました。

よくあるのは「自分自身の成功の為」とか「女の子にもてたい」とか、割と自分発信的なところからスタートするのですが、今作の女性達は「廃れていく街のため」だったり「女性としてのこれからの生き方」という強い信念から突き動かされてフラガールに志願します。

実は僕自身、というか僕の祖父や叔父がバリバリの炭鉱マンで、僕が子供の頃はそういう環境を間近に見ながら育ってきたため「炭鉱の町」というコミュニティがどういうものか子供ながらに感じていた部分もあって、この女性達の心境と当事の思い出が繋がりました。

「男は山で命を懸けて石炭を掘る。女は家で夫の帰りを待つ」

少なからずこういう雰囲気は当事のコミュニティにも普通にあったと思います。
別にそれ自体を否定するつもりもありませんし、そうやって「炭鉱の町」の生活は成立していた部分もありました。しかし時代の流れから祖父が勤めていた炭鉱も縮小の一途を辿り、叔父の代で遂に廃鉱となりました。一時はレアメタルなんかも出て賑わった瞬間もあったんですけどね・・・。

でもそうやって廃れていく町の中で「女性達はどうやって生きていくのか」という思想は、ともすれば炭鉱マンたちのプライドとは対極にあったのかもしれません。

劇中、町の住人達は東京から来たダンス講師の平山先生(松雪泰子)に「このよそ者が!とっとと東京に帰れ!」と容赦ない罵声を浴びせます。
きっと彼ら自身も迫り来る時代の波に抗えない事は百も承知だったのでしょう。だからこそ、今まで自分達が守ってきたはずの女性達が「私たちも!」と声を揚げ輝き始めるのが眩しくもあり歯がゆくもあり・・・。

それまで娘の紀美子(蒼井優)に対し、ずっと厳しく接してきた母(富司純子)も、紀美子の真剣な練習を目の当たりにして心が揺れます。
そしてハワイアンズのオープン直前の寒波で施設に植えたヤシの木が危ないとなった時、彼女は意を決してストーブ集めに奔走します。

「今まで仕事っていうのは暗い穴の中で死ぬか生きるかでやるもんだと思っていた。でも人が喜んでくれる仕事があってもいいと思う。こんな木枯らしくらいであの子らの夢を潰さんでやってくんちゃい。どうかストーブを貸してくんちゃい」

それは単に娘の為にとかそんな事ではなく、みんながこの町でこれからも明るく生きていくために。
そういった要素が、自分の幼少期に感じた町の雰囲気とリンクする部分もあって、結構ぽろぽろときました。

ラストのダンスが大成功に終わった後、各メンバーのアップが写りますが、みんな満面の笑顔で思いっきり泣いていました。蒼井優も涙を必死に堪えながら笑顔で手を振ります。
まさにライブ映像を見ているかのような感覚。みんなとても美しく感じました。
こんな元気で逞しい女性達がいるなら福島はきっと大丈夫。
これからもフラガールと福島を応援したいと思います。がんばっぺ!
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