Kuuta

荒野の決闘のKuutaのレビュー・感想・評価

荒野の決闘(1946年製作の映画)
4.1
馬の疾走感や空の広さ、アクションの緊張感は言うまでもないが、今作は街の魅力にも溢れている。街の発展と、そこに集う人のドラマを叙情たっぷりに描く「街の映画」と言って良いだろう。骨組みだけの教会が完成し、牧師もいないのでとりあえずみんなで踊り出す。アメリカ創成期の神話を見ているようだ。

主人公のワイアット・アープ(ヘンリー・フォンダ)は最初はカウボーイだが、保安官に転身し、髭を剃り、花の香水を付ける。一旦街へ取り込まれるものの、最後は荒野に帰っていく。西部と東部の中間者のような立ち振る舞いをしている。

ドク・ホリデイ(ビクター・マチュア)は元々東部で医者として働き、シェイクスピアにも造詣の深い教養人だ。だが、病気で余命が短いと知り、西部で傍若無人に振る舞っている。
西部の恋人のチワワ(リンダ・ダーネル)の為に手術を行う事で東部時代を思い出すが、最後はワイアットがドクの私事に介入したお返しとして?ワイアットの復讐に力を貸す。賑やかな音楽の鳴る街とは裏腹に、西部にも東部にも居場所の無くなった彼は、陰影の効いた画面に呑まれ、静かに消える。

東部の恋人クレメンタイン(キャシー・ダウンズ)は街の発展と共に教師の道を選び、街と同化する。学のある彼女は放浪者にならず、荒野に出た男の帰りを待つ立場に落ち着く。ラストカットが圧巻だ。

西部劇、伝統的な米国の映画において玄関ポーチは重要なモチーフであり続けてきた。街(文明)と荒野(無法地帯)の境界線でこそ、ドラマが生まれる。ポーチに椅子を置き、ゆらゆら揺れながら通り過ぎる人を眺めるワイアット。もう少し自分で捜査しろよとも思うが、ひたすら映像は美しいのであんまり気にならない。82点。
Kuuta

Kuuta