悪魔の毒々クチビル

霊幻道士の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

霊幻道士(1985年製作の映画)
4.0
「人は善人か悪人、死体は屍かキョンシーだ」

性悪金持ちジジイの死体が凶悪なキョンシーと化し、道士とバカ弟子二人が立ち向かうお話。


今となってはあまり見かけなくなってきた、キョンシー映画の代表作。
ずっと前から存在は知っていましたが、観るのはこれが初めてです。
観ながら「あれ、あのテンテンみたいな名前の女の子が出てくるのってこれじゃなかったっけ?」と思っていましたが、そっちは「"幽"幻道士」なんですって。あ、知ってた?うん…

で、これがあらゆる面で意外と良かった。
思いの他バカで思いの他キャラが個性的で、思いの他しっかりアクションしている楽しい作品でした。
あとキョンシーって、今作の英題が「Mr.Vampire」なのから分かるように吸血鬼的な存在なんですね。
死体だからって理由でゾンビに近いと思っていました。確かに吸血鬼みたいに牙も生えていたな。
て言うか噛まれてキョンシー化するのはゾンビも吸血鬼も共通しているけど、お札で自分に従えている描写はブードゥー教由来のゾンビっぽさもあるしで、新旧ゾンビ要素を兼ね備えているなとも勝手に思っていたんですけどね。
お札を貼ると動きが止まるとかは知っていたけど、息を止めている人間を見失うのともち米が苦手な設定は知らなんだ。
となるともち米=にんにくって感じか。

コミカルな要素はイメージ通りながら、アクションにも力が入っていてバカ格好良い作風が非常にキャッチーで見応えありました。
ガオ道士だけでなく弟子の一人センも、いつもはイタズラばかりしているくせにカンフーに秀でているので、実質今作の人間キャラでは一番腕っぷしが強い気がする。
ただキョンシーって肉弾戦だと殆どダメージを与えられないから、道士と二人掛かりでボコボコにしても全然効いていないんですけど。
もう一人の東京03豊本フェイスなモンは、あんま頼りにならないし後半キョンシーに噛まれてキョンシー化しそうになったりと散々ながら、本家豊本よりも貪欲に笑いを取りに行く姿勢が良かったです。

途中からセンに惚れた幽霊お姉さんがちょこちょこ現れ、センを術で惑わせ誘惑しますがそれに気付いた道士とキョンシー差し置いてド派手な術バトルをしたりと、後半でいきなり話が大きくズレるんだけどこのお姉さんも中々切ない幽霊だし終盤、半ばキョンシーと化したモンからセンを助けてあげたりで憎めないキャラなんですよね。
なので「あれ?本筋置いてきぼりじゃね?」とか思いつつも普通に観れちゃう。

今更怖いとは思わなかったけど、掘り起こした死体が20年間腐食しないどころか段々若返って来てキョンシーになったらゾンビみたいに顔がグズグズになるのはホラーしているなぁと。

内容は勿論、キャラが面白くて気に入りました。
続編も楽しみだなぁと思っていたらその後は今作と全然関係ない舞台設定とのことなので、ちょいと残念。
「幽幻道士」の方も観てみようと思います。って書こうとしていた間に観たけど。