MariaElena

NINEのMariaElenaのレビュー・感想・評価

NINE(2009年製作の映画)
3.3
『シカゴ』のロブ・マーシャルが監督を務めただけあって、ダイナミックなミュージカルシーンは見どころ。“そこだけは”素晴らしいと思う。

たぶん監督は悪くなくて、キャスト達ももちろん悪くなくて、脚本がアカンかったんかな?一言で言えば、『クズ男と娼婦たちのミュージカル』になってる。

マリオン・コティヤール→悪くない
ペネロペ・クルス→悪くない
ケイト・ハドソン→悪くない
ニコール・キッドマン→悪くない
のに、バカな男向けに作ったんか?と思うほど、女優たちが演じたキャラが安っぽく映ってる。
いつもこういう作品を観ると思うけど、セクシーを下品に撮ってはいけない。
私がこの作品を観るきっかけとなった、大好きなペネロペ・クルスも、もうやめたげてと止めたくなるほど下品な歌詞を歌わされていてつらかった。

ただ、ダニエル・デイ=ルイスが演じたグイドのような男に実際群がってくるのは、自分がなく品もない女たちだというのはリアルの世界でもわかるから、それをミュージカルにしたいならこんなに素晴らしい女優たちを起用しなければよかったのでは。(まあそしたら誰得?な映画になってまうけど)
だからやっぱり、このストーリー自体に魅力がなく、ロブ・マーシャル監督の『シカゴ』に続くミュージカル映画が何故こんなに低評価なのかというのは観れば分かる気がする。

どうしようもない男を見ているのが好きなドSお姉様にしかウケないんじゃないかと思うほど、グイドという主人公に全く肩を持てない。
グイドのようなタイプの男性は日本にもいるけれど、決してあなたはモテているわけじゃないんだよと言いたい。
モテる男というのは、女が勝手に恋い焦がれて追いかけてくることであって、グイドは女の方にイニシアチブを握られてる。モテるというより、人のペースに流されて生きてしまっているだけ。(ペネロペ演じるカルラは除く)
自分の聞きたくない声に耳を塞ぎがちで、自分に肯定的な女性たちに定期的に慰めてもらってなんとか仕事を頑張れる!みたいな姿は、キャバクラ通いをやめられない男たちのようだと思った。
グイドをいい気にさせるのも、落ち込ませるのも、全て女性側がコントロールしていて、確実にこれはモテているのではない。

不倫相手たちよりも、自我があまり正面に出てこないタイプの女が妻なところもあるある。うるさく言わないから結婚するまで続いたんだろう。だから不倫もしやすかった。
そんな妻でも人間やからいつかは不倫を咎めるんやけど、だいたいその時には女側の気持ちも冷めてるんよね。でもグイドのような男はそこでやっと妻を手放すまいと必死になる。
イタイわ。無理。こんな典型的なやり方しかできん奴が何故映画の主演になれる?

マリオン・コティヤール演じる奥さんは優しいからね、グイドに「あなたは欲望の獣よ」って言ってたけど、ごめんけど獣にもなれてないからな?獣やったら生きていくために賢くないとアカン。やのに最終的に「僕が何をした?」というセリフが出てくる時点で、獣やったらもう上位の肉食動物に食べられて死んでるねん。

ラストの展開がもう、モテる男かモテてたわけじゃなかったのか一目瞭然やね。
モテる男性はいくら女性に振り回されても本人はそんなに振り回されてるとは思ってなくて、むしろ自分のしたいように生きてるから、女性側に「あの男に振り回されてる…っ」と思わせる力がある。
U-NEXTで観たけど、見出しに「もてる男は辛いよ!?」って書いたん誰なんかな。この映画最後まで観たか?予告編だけ見て書いたんちゃうかと思ってまう。
MariaElena

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