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英国王のスピーチのtaruponのレビュー・感想・評価

英国王のスピーチ(2010年製作の映画)
4.0
公開時に映画館でみているのですが、気になって確認したいシーンがあり、Huluで見直しました。ちょうどいい具合に細部を忘れていて(笑)、新鮮な気持ちで楽しめました。
何より、王族がいかに孤独で、その中で結べたローグとの関係性、エリザベス王妃との夫婦関係が本当にジョージ6世にとって宝であったのだなと感じる。
当時の貴族の育ち方としては、ままあることだったのかもしれないけれど、幼い頃家庭教師から嫌がらせ受け、関係が疎遠な両親はそのことに3年近く気づかない。何よりも、王族として堂々と恥ずかしくない態度を求められ、X脚や左利きを矯正される。(矯正具はかなり痛かったらしい)こういう中で吃音になると、そのことがまた非難されるものになり、それがジョージ自身の萎縮につながり悪循環を生んでいく。こういう育ち方をしたら、精神的にいろいろ問題が出て当たり前だなと感じる。
その中で、ジョージは、吃音の自分と、王族・国王としての資質、あり方の中でもがき、ローグの助けを借りて吃音を克服し、開戦にあたってのラジオ放送を成功させる。
コリン・ファースのジョージ6世は、生真面目で家庭的で短気も起こすけれど忍耐強い、敬愛の心を抱かせる人間像になっている。
そして、ジョージ6世を支え続けるエリザベス王妃がとてもよい。愛情深く、ウィットに富み、コンサバでありながらも、必要なことに対してはきちんと新しい状況を受け入れていく。ロンドンの街中のローグのオフィスに護衛もなしに訪ねていくところ(この時点では、ヨーク公妃だったわけだけれど、ほんとにこれはアリのことだったのかしら?)での初めてのエレベーターとか、ローグとのやりとりとかも面白いし、まさかヨーク公夫妻が来ていると知らずに帰宅したローグの奥さんと対面するシーンとかも面白い。

そして、戦争中のこの時代、国民に対してきちんとメッセージを伝えることがどれほど大切かということもすごく伝わってくるので、いろいろな葛藤がありながらもローグとの関係性を築き、吃音を克服した喜びが感じられる。

良き伝統を守り、でも必要なことは新しいことを取り入れていく、そうした良い意味でのイギリスらしさがにじみでている映画だったと思う。
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