濱口竜介は毎回、『リオ・ブラボー』と『ハズバンズ』を観てから撮影に入るのだという。どうしても観たかった、そしてどうしても観られなかった『ハズバンズ』、やっと観られました!(そのためにU-NEXTに加入。菩薩さん、教えてくださってありがとう)
ジョン・カサヴェテス
ピーター・フォーク
ベン・ギャザラ
この3人が演じる黄金のエクスタシー(ちがう)
友が死に、4人から3人になって、家にはどうしても帰りたくなくて。家に帰りたがらない夫たち。大声で喋って、呑んでゲスに笑って吐いて咳して大声で喋って。顔のクローズアップの応酬が続く。切羽詰まった感や気まずさが全開。張り詰めた緊張感や、その場の空気のようなものが、痛いくらいに伝わってくる。
ロンドンに出向いた3人が、ホテルかどこかの賭博場で、大声でわめいている時。ガス演じるカサヴェテスがこう言う。「俺たち うるさすぎる。アメリカ人丸出しだ。」
ひと晩を明かした翌朝、ロンドンの女性がカサヴェテスに言う。「あなたって複雑な人。アメリカ人で無遠慮だし、本当は敵でも友達面する、表面だけ。クスクス笑いや子どもじみた真似。」
自己の心の空洞を見つめられないからこその虚しい会話。ずっと喋っている3人は、笑いながらも自分たち以外の人を蔑み嫌悪し、あんなに喋っていても、真のコミュニケーションをとることはできない(中国人女性とピーター・フォークとのシーケンスはすごくいいし、そしてまた象徴的でもある。コミュニケーションの不全は、彼をどうしようもなく中国人女性に惹かれさせることになるし、同時にそれが旅の終わりのふんぎりへと向かわせる)。
この映画のなかの男たちは本当に嫌だなあ。女を蔑んでるし、女だけじゃなくて他者を蔑んでる、だから今のアタシはこの映画を好きとは言えないなあと思いつつ観ていた。けれど、これはアメリカそのものを描いているのかもしれないと思ったとき、映画は全く違った見え方となった。およそ40年前の作品が、現在のアメリカの影を描く映画のようにもみえてくる。まだまだアタシの理解は足りてないということだ。
これから何年かにいちど観て、自分がこの作品をどう思うかなって確かめたい気持ちはある。それまでに早くディスク販売してくださいっ!
終わり方も絶品!!!
あんな終わり方、ずるい!!!
男ってやっぱずるっ!!!
〈追記〉2022.04
4.0→ノースコアに変えます
この作品を観てから時間が経ったけど、今も心のなかでモヤってる作品でもあります。カサヴェテスのこの作品は、今現在に於いても高評価で良いのか。本当にそれで良いのか。