この暗黒の時代背景の上で演じられる舞台内映画、そして男女の限られた環境下でのメロドラマもあるからか閉鎖的ではなく妙に開けた印象。ヌーヴェルヴァーグから引き継がれる軽やかさも抜かりなく披露され、愛と秘密の二面性が陽の光の届かないところで展開される。希望のない状況で搾り出すように人々が見出した演劇の可能性やエンタメとしての訴求力、目的意識を揺さぶるどうにもならない愛の芽生えの予感には何かに縋り付くようなそれぞれの思惑の交錯が見て取れる。生きづらい中で感じ始めた非日常に活路を見出す。息苦しさは二つの意味を伴っていたずらなドラマを紡ぎ出す。