シネラー

1984のシネラーのレビュー・感想・評価

1984(1984年製作の映画)
3.5
ジョージ・オーウェル原作の
『1984年』を映画化した本作を初鑑賞。
原作が好きだったので拝見したのだが、
原作の雰囲気を良く抜き出した
映像化とメッセージ性だと思った。

第三次世界大戦を経ての1984年、
全体主義国家で党首ビッグブラザーを
崇拝する大国オセアニアにおいて、
真理省の役人ウィンストンが政府に
疑念を抱いていく内容となっており、
そのディストピアなSF小説を
見事に抜き出していると思った。
原作で印象的だった
"2+2=4と言えることが自由である"
の台詞もしっかり登場しており、
その自由が絶対的な権力によって
精神的にも弾圧されていくのが
心苦しく感じられるところだった。
子どもから大人まで政党の思想を
植え付けられた社会は恐怖であり、
大衆がビッグブラザーを讃える場面等は
ある種の嫌悪感が感じられた。
それでいてウィンストンが
監視されていた事が発覚する場面は、
原作を知っていてもその唐突感から
怖い部分だった。

気になる点としては、
世界観等に関する部分の説明が
断片的である故に、
原作小説を知っていないと一部の用語が
理解しづらいと思った。
又、陰鬱で暗い雰囲気が続くので、
その点では観る人を選ぶ題材でもあるだろう。
加えて、ウィンストンが捕まってからの
拷問場面における問答は興味深くもあるが、
長尺なだけに映像としては
退屈に思えてしまった。

原作を読んだ時のイメージを
大事にしたい思いもあった為、
気になりつつも鑑賞していなかったが、
全てが監視や独裁によって管理された
支配的な社会の雰囲気は見事で、
文学作品としての面白味を良くも悪くも
抜き出ている映像化だと思った。
高い技術を用いたディストピア社会が
現実にある時代だからこそ、
原作の拝読も含めて損はない作品だった 。
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