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山猫のmiiのレビュー・感想・評価

山猫(1963年製作の映画)
3.8
自らも貴族出身であるルキノ・ヴィスコンティが描く 貴族社会の衰退。

ロケ地の景色も素晴らしく 石造りの家屋と街並みも趣きがある。
衣装も調度品も すべてが絢爛豪華で
「貴族の暮らし」これらを眺めるだけでも眼福でした。
(アラン・ドロンも!)

1860年シチリア
フランチェスコ二世の治世に反して
革命派ガリバルディ軍が政府と対立。

貴族の鑑であるかのようなサリーナ公爵(バート·ランカスター)と
時代の波にうまく乗る 彼の甥タンクレディ(アラン·ドロン)との対比が見られます。

所謂成金であるドン·カロージェロの娘アンジェリカの美しさだけで心を奪われてしまうタンクレディは
希望を持って変革のためにガリバルディ軍で戦っていたが
後にあっさりと 国王軍の将校に鞍替えしてしまう。

先に「時代の波にうまく乗る」と書きましたが
悪く言えば 尻尾を振りなから世を渡り歩くような男とも言える。

公爵は 自分の娘がタンクレディに好意を持っている事を知りながら
家の地位を守るために カロージェロの娘との結婚を後押しします。

後半の1時間にも及ぶ舞踏会の場面が見どころ。
老いたとはいえ 気品が溢れる公爵には 圧倒する貫禄があり
ワルツを踊る姿にも威厳があります。
気品のかけらもない若い女性たちが「たむろしている」舞踏会に参加した公爵は
おそらく 昔とは異なるその様変わりした風景に辟易したのでしょう。

しかし 貴族社会の衰退に嘆きながらも
自身もタンクレディの背中におぶさるような形でしがみつくしかない悲哀も。

周りは浮かれている舞踏会の中で
「死」を望んでいるかのようにも見える虚しさが彼を支配していたけれども
あのワルツを踊った時だけは
この嘆かわしい世の中から開放され
栄華の時を思い出す幻想に酔いしれたひとときだったのではないかしら···
mii

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