inazuma

スカーフェイスのinazumaのレビュー・感想・評価

スカーフェイス(1983年製作の映画)
4.8
パワーがみなぎる!
…それでいて猛烈に切ない。
3時間弱の長尺ですがずっと画面に釘付けであっという間のひととき。もっと早く観とけばよかった!今のところギャング映画ナンバー1!

ちゃんとアル・パチーノ映画を観たのは『ゴッドファーザー』ぐらいなもんで、このたびあの瞳孔ひらきっぱなしのギラギラ目に吸い込まれ完全にファンになってしまいました。欲望のままに突っ走り、一度火が点いたら止まらない殺人マシンのような荒くれギャング…しかし実は家族想いな男でもあることが冒頭で示され、この男のことをどういう目で見ればいいのか分からなくなる。同時にめちゃくちゃ感情移入できる男でもある。

「自分以外に誰を信用できる?」
「どいつこいつも消えちまえ」
「俺は一人でいい」
…身内を想うがあまり、こんなことを思ったり口に出して言ってしまう。この愛すべき不器用ぶりよ!泣
ここまでだと単に自分の身内にだけ優しい男と捉えられますが、終盤のジャーナリスト暗殺のシーンでみせる彼のある行動、信念には思わず涙!感情移入できる男から、憧れの男へと印象がガラッと変わった!偶然が生み出す悲劇に次々見舞われながら迎えるクライマックス。トニー、世界はあなたのものだ!…と思わず叫びたくなった。

先日リバイバルしてた『悪魔のシスター』でも楽しんだ「デ・パルマカット」なるものを終始意識してしまった。序盤のヘクトルたちとの死闘では、マンション3階からグーっと下の道までカメラが移動してまた3階まで戻っくる長回しが印象的。平和な街並みと惨劇が起こっている部屋を長回しでつなげることで生と死が隣り合わせであることを示しているようでした。エルヴィラの初登場シーンも、エルヴィラがこっちに背中向けてエレベーターで降りてくるとこをジッとカメラが見据えるという、ヒロイン初登場にしては地味で変わった撮り方をしてます。その直後エルヴィラがこちらに顔を向けた瞬間の神々しさときたら!ヒロインの美しさをより際立たせるためにあんな撮り方を!?考えすぎな気もしますが、撮り方でいろんな解釈ができるのも楽しいです。
「デ・パルマカット」と関係ないですが、キャデラックでのトニーとエルヴィラのやり取りが一番好きかも。
エルヴィラの帽子を被ったトニーを見て思わず吹き出してしまうエルヴィラが可愛い。それまで凄い感じ悪かっただけに。その後もう1回トニーを見てたまらずまた吹き出しちゃうとこも好きすぎる。二人の距離がほんのちょっと近くなるシーンに見えますが、どうしても二人のアドリブに見えてしまう。束の間のホンワカシーン、最高でした。

とにかくトニーと出会えて良かった!
アルパチーノ映画をさらわなければ!
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