きゅうげん

ヴァルハラ・ライジングのきゅうげんのレビュー・感想・評価

ヴァルハラ・ライジング(2009年製作の映画)
4.0
レフン監督の新作もあるし、同系統の『ノースマン』公開も控えてるし、チェックしとこっかな……。って姿勢で観てみたら、琴線わしづかみレベルでした。
小説でも映画でも、こういう「空虚で不条理だけど運命的な冒険、というか放浪」ってシチュエーションが個人的に大好物なんですよね〜。諸行無常感というか、無間地獄感というか。

本作は「アメリカ東部デラウェア州で発見された謎のルーン文字」に着想を得たかたちで、北方民族の奴隷が十字軍に同行し新大陸に至るまで、を描きます。
注目すべきは、みんな大好きマッツ・ミケルセン演じる謎の主人公が、“隻眼”や“予知”など要素てんこ盛りなところ。マッツの不思議な存在感が、宗教・歴史・文化的な象徴として意味慎重に映ります。

それと、レフン監督のフィルモグラフィー的にも大事な作品ですね。
ブレイクした『ドライヴ』以降のビビッドなショッキングさはまだなく、かといって以前の『プッシャー』三部作のストリートなアウトロー感も希薄。
『ブロンソン』と本作は観念的な独自色が魅力の、重要なターニングポイントだと思います。前作『ブロンソン』はとことん露悪的でしたが、こっちは対照的なほどソリッドでシャープ。
自然ロケ重視ってのも一線を画す要因でしょうか。
レフン監督作品内でも異色な映画ですが、かなりのお気に入りになりました。