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スウィングガールズのJPのレビュー・感想・評価

スウィングガールズ(2004年製作の映画)
4.6
舞台に立つまでのとんでもない遠回りが面白すぎる名作!前半の遠回りが酷ければ酷いだけ、妙なディテールに感動してしまうし、笑ってしまうし、後半からの「そんなわけない」展開すらも爽快になる!

男子シンクロ部を描いた「ウォーターボーイズ」と違い、どうしたって障壁となる「楽器が高価」という出だしの課題を、ここまで面白く展開させられるのはもう天才。ここのディテールが丁寧であればあるほど、楽器を嗜む人にとっては共感性の高い物語になるし、楽器を嗜まない人にとっても、彼女たちのドタバタ劇を笑いながら楽しめる。
なおかつ、このドタバタ劇が長ければ長いほど、彼女たちが迫力のある演奏をする場面を、視聴者に心待ちにさせる。だからこそ途中抜けしたギャル軍団がブランド物を売り払い、制服姿で楽器を手に戻ってきて何故か立派に演奏できてしまう「謎展開」すらも、待ってました!と応援できてしまう。
行きはじっくり描いて、帰りは省略するといった、「映画における省略」を上手く利用しているように感じる。

軽いノリでビッグバンドに片足を突っ込んでしまったことで、純度の高い音楽の喜びそのものに出会ってしまうという物語が、とにかく素晴らしい。
少し象徴的なのが、中村(平岡祐太)の運ぶ電子ピアノを鈴木(上野樹里)がうっかり一緒に運んでしまう場面。最初はサッカーボールをぶつけて邪魔しようとしていたのに、中村がよろめいた弾みで電子ピアノを持ってしまう。最初はそんなつもりなかったのに、巻き込まれて、音楽を楽しむ心が無意識に芽生える。無意識だからこそ、巻き込まれたからこそ、その心はどこまでも純粋だ。吹奏楽部員が食中毒から復帰して「せいせいした!」と口で言いながら、皆で泣きながら楽器と披露の機会を奪われたことを嘆く場面の美しさ。音楽の楽しさに気づいてしまった彼女たちの悲哀が、「先生死んだんか?」の滑稽さと同居しているこの場面がすごく好き。コメディセンスが秀逸。
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