saya

ザ・チャイルドのsayaのレビュー・感想・評価

ザ・チャイルド(1976年製作の映画)
4.0
妻の出産前に子供たちを預けてスペイン旅行にやってきた夫婦が船を借りてアルマンソーラ島へ向かったのですが、なぜか島には子供しかおらず大人たちの姿がどこにも見当たらない話です。
自分が子供好きなこともあって子供が殺人鬼の映画は最高だと安易に考えていたのですが、冒頭8分にも渡って現実の戦争や内戦で亡くなった子供たちの記録映像が流される演出には度肝を抜かれました。
ホラーはフィクションだから人が死ぬことも娯楽として消費できるわけですが、現実の残酷さを改めて見せつけられると冷や水を浴びせられた気分になりますね。
単純なパニックホラーではなく社会的なテーマも含んだシリアスで重厚な内容なのが他のホラー作品にない独特な魅力でした。
冒頭からビーチに流れ着く死体で不穏な空気を演出しながらも、港町で祭りを楽しむ仲睦まじげな夫婦の様子を丁寧に描いてくれたことで、島で起きる惨劇の残酷さがより際立っていますね。
祭りで見かけた子供たちの遊びピニャータが島でも残酷な遊びとして再現される演出はもう最高としか言いようがないです。
島の子供たちが夫婦をすぐ襲うわけでもなく泳がせている時間や、何を考えているのか分からない無邪気な笑顔がより一層の不気味さを醸し出していますし、島の静寂と今にも何かが起こりそうなただならぬ空気が素晴らしかったです。
嫌になるくらい島が静かすぎるからこそただ電話が鳴るだけでも、これほど恐怖演出として効果的に機能するのでしょう。
身重の妻を心配させまいと考えた夫の判断ミスによって状況がどんどん悪化していく展開も上手かったです。
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を思わせる終盤の展開も、先入観で善悪を判断しがちな人間の皮肉を感じましたね。
この作品で襲われる大人の定義や境界線については疑問も残りました。
例えば16歳のヤンママは子供と大人のどちらに分類されるのか、今は大人を殺している子供たちも成人年齢になったら殺されてしまうのかについてはすごく気になります。
saya

saya