HicK

おもひでぽろぽろのHicKのレビュー・感想・評価

おもひでぽろぽろ(1991年製作の映画)
4.3
《過去の日常が今を作る》

【何気ない日常】
海外レビューの一つに、日本は「Slice of Life(日常の切り取り)」を扱うのが上手いと書いてあった。たしかに普遍的な体験に焦点を置いた今作は、劇的展開があるわけではないのに興味をそそられる。フィクショナルドキュメンタリーと言うべきか、親しみが湧く距離感が好き。

【現在と過去】
過去の場面は、多くの人が共感してしまようなエピソードの集まりだと思う。つい自分の過去も考えてしまった。鑑賞中、過去の自分を"呼んで"しまう。その過去たちが今の自分を作っているという説得力と、その過去たちが未来へと背中を押してくれているという温かさを感じる物語だった。

【デザイン】
絵のタッチが自分好みだった。リアリティーを追求した美しい山形の背景。淡い色で現在と差別化された過去のタッチ。そして親近感湧く高畑氏のキャラクターデザイン。特に顔のデザインが好きだった。顔の線を省く事が美とされる日本のアニメ業界では珍しく、しっかりとしたシワや鼻があるデザインで繊細な感情表現が際立っていた。そのデザインが与える実在感が大きく物語に作用してるように思う。

【総括】
人生の分岐点に立ち、過去と向かい合って、最後は過去に後押しされながら未来に向かっていく。こころ温まる良い映画。じんわりじわじわ系。
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