むさじー

受取人不明のむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

受取人不明(2001年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

<基地に暮らす若者の残酷な青春>

冒頭「本撮影は動物の安全を確保して行った」旨の字幕が流れるが、それくらい血生臭く、キム・ギドクの毒と愛が詰まった一作である。
米軍が駐留する村で、ハーフの若者はその出自から差別され、負い目のある母は暴力を受けながらも溺愛していた。
一方、片目であることに劣等感を抱いている女子高生は、愛する無力な若者と、目の治療を条件に迫る米兵の間で揺れる。その米兵は、軍隊生活に耐えられず麻薬に走り、精神的に追い詰められていた。
誰もが心の闇を抱え孤独と絶望の淵にいて、今まで危ういバランスで保っていたものが、崩れ去って闇雲に走り出し、やがて狂気に至る。
ラスト、溺愛する息子を失った母親は、息子の亡骸を食べ続け、住まいであるバスに火をつけて自死するが、その鬼気迫る壮絶さには言葉を失う。
傷つきながらも、片目に戻った娘と気弱な若者が想いを確認し合って、再出発を予感させたのが、せめてもの救いである。
何とも暗く重い内容で、広く勧められる訳ではないが、人の心の奥深い闇の部分を見せつけられるようで、その凄みとエネルギーに圧倒されると思う。
また本作は、朝鮮戦争の傷跡、在留米軍の基地問題を正面から捉えていて、その意味でも深く考えさせられる。
むさじー

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