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時計じかけのオレンジのmatchypotterのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
3.8
奇才、スタンリーキューブリック監督作品。
、、、まさに、奇才。

盗み、喧嘩、強盗、乱行、暴行、何でもありで、毎日毎日連んでは自由に生きてる青年、アレックス。

秩序に対して無秩序で。
とにかく自分たちの気の向くままに、やりたいことを。

しかし、そんな仲良し放蕩4人組の中で、彼がなかなかに過激でエゴが強いだけに、彼だけが浮く感じになり、他の3人に反感を食らう。

やや不穏な空気が漂う中で少し背伸びした盗みを働いてるところ警察とカチ遭い、他の3人にハメられてアレックスだけ取り残され、捕まる。

捕まって、順当に14年の刑期でぶち込まれる。
そこでアレックスは退屈だと言いながら模範囚のようなことになり、“ある計画”に立候補する。

“悪党を矯正する計画”。

つまり、“洗脳”。
医療的研究の一環というこの計画により、アレックスが無秩序の悪党青年から模範的な人間に変えられる。

謎の薬を打たれ、暴力的な映画を観せられる。瞬き禁止の状態にされて。
すると、その薬のせいか、そういった暴力的な描写に吐き気を催すようになる、、、それを何日も。
これを観て、禁煙外来の治療みたいだな、と思った。

頭の中に潜む混沌とした“性悪”をひた隠し、必要以上に規律正しい看守長の罵りに耐え、謎の薬の実験を耐える。

その成果として人前で理不尽な罵詈雑言、美しい裸の女性を前に、、、吐き気。

“悪党を矯正する計画”。
動機や、道徳感ではなく、ただただ犯罪抑止のための人格と人間性、嗜好を書き換えるような洗脳実験。

これを経て、認められ、刑期を終えたことになってシャバに戻ってくる、、、。
イライラさせられても、反抗したくても、吐き気。

悪党だった頃のシーンの数々。
剥き出しの性、暴力、欲望の限りがめい一杯に飛び込んでくる徹底的な演出描写。

もう、当時の彼らの頭の中はこんな事で頭がいっぱいなのである、という刷り込みがスゴい。

そこから洗脳されて帰ってきてからの彼の変化に合わせての描写や、出来事の数々。
洗脳されて“模範”となって帰ってきても、周りは変わってない。

今までの彼がそれを凌駕する混沌だっただけに、彼が模範として戻ってきたことで、周りの混沌や性悪が顕在化したり、今までの彼に対してのしっぺ返しがやってくる。

ちょこちょこ独特な言い回しがある。
それがSFやサイコな感じを彷彿とさせる。
アレックスが“語り部”として物語を細くしていくのが良い、というか、これがないと彼の内面がわからないので成立しない。

彼がイカれてたのか、この計画がイカれてるのか、彼らが淘汰したかった世界や民衆がイカれてるのか。

人の中に芽生える、性や悪、暴力や死、様々な欲望への衝動、どこまでが人として持つことを許され、どこからが正気で狂気なのか、、、これを観てるとよくわからなくなってくる。

“雨に唄えば”、スゴい使われ方に。
キューブリック、恐るべし。彼が一番イカれてるのか、まさに奇才。

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TSUTAYA DISCAS運営の映画コミュニティサイト「Discover us」にて同アカウント名でコラムニストをさせて頂くことになりました。
https://community.discas.net/announcements/ib1wyncr43idknqm
別視点で色々映画について書いていこうと思います!ご興味ある方は是非お待ちしております!
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